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The Tree―雨の杜

Tree06 「The Tree―雨の杜」

アクリル P30Y 2004年制

もうじき暖かい春がやってくるという頃、しとしとと冷たい雨が降り続き、今泉の亡くなった朝、雨は凍るように冷たい雪に変わった。

春霖…春の長雨と呼ばれるこの雨を、多分、生涯好きにはなれないだろう。

両腕に抱えた遺骨を納めた木箱の感触と、肌を刺す冷たい春霖のイメージは、心の中に深く焼きついて、一時もはなれることはない。

「雨の杜」に降り注ぐ雨をみていると、大地をはぐくむための喜びの雨のようでもあり、生きとし生ける者の悲しみの涙のようでもある。

この作品を仕上げた半年後に、今泉は独り静かに大地へ帰ってしまった。

音楽にしても絵画にしても、鑑賞する場合には、聴く側あるいは観る側の、それまでの人生経験が心を動かす大きな要になっていると感じることが多い。

今泉の遺児、カスキを弾く少年、12歳。憧れのピアニストは舘野泉さん。

その館野泉さんが、フィンランドにおいて「通俗的な感傷趣味」と刻印を押され、長い間埃を被って忘れ去られていた作曲家『ヘイノ・カスキ』の楽譜を校訂・解説し、日本で紹介している。

館野さんによって『激流』という邦題を得た美しいその曲を、12歳の少年は何とか弾きこなしたいと懸命に頑張っているのだが、この12年の人生を、コンクリートとアスファルトとにぎやかな街灯の中で育った彼には、『水の音』は単なる音でしかなく、それを『川や雨や雫の囁き声』などと感じることは、なかなか難しいようだ。

只今のところ『激流』は、ほとんど騒音と変わらない『濁流』となっている。

まだ12年しか生きていないのだもの。これからの経験で、そういうことが感じられるようになれたら良いね…。

夜の海辺にて〜カスキ:作品集 Music 夜の海辺にて〜カスキ:作品集

アーティスト:舘野泉
販売元:ダブリューイーエー・ジャパン
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