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Elephant Accident 03

Keinanbi 『Elephant Accident 03 EA03-182-Draw』

162×130㎝ 2003年制作

慶南道立美術館コレクション(韓国)

夢を見た。

もう死んでしまった人の、夢を見た。

とても単純な、日常の延長のような、たわいない夢だ。

ごく普通の夕方に、ごく普通に「ただいま」と言いながら、死んだはずの人が、玄関のドアを開けて帰ってくる。

こちらも「お帰りなさい」と答えて、玄関まで迎えに出る。

子供たちが、子犬のように、帰宅した父親にじゃれついている。

帰宅した人も、出迎えた人も、皆がごく普通に幸せで、何事もなかったように、食卓には夕餉の支度がととのっている。

…そして、夢は覚めるのだ。

こういう類の夢が、一番困ってしまう。

なぜなら、ベットの上で、一体今がいつなのか、ここが何処なのか、自分の本当の生活は「あちら側」なのか「こちら側」なのかが、分らなくなってしまうからだ。

脳が完全に目覚めて活動を開始するまで、自分のいるべき場所が分らずに、暫くは身動きが取れない。

両手を握っては閉じ、握っては閉じ、両眼で天井を睨んでは閉じ、睨んでは閉じ…。動作を少しずつ増やしながら「こちら側」が現実であることを確認する。

現実を確認することは、死んでしまった人は、もう二度と、玄関の扉を開けて「こちら側」に帰ってくることはないのだと、改めて思い知らされることでもある。

こういうのが、一番困る、一番苦手な夢だ。

萩尾望都さんの『あぶな坂HOTEL』は、あの世とこの世の間に建つホテルだ。

時々、夢の中で帰ってきては、私を大変困らせるあの人も、ここの住人なのかもしれない。

あぶな坂HOTEL (クイーンズコミックス) Book あぶな坂HOTEL (クイーンズコミックス)

著者:萩尾 望都
販売元:集英社
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