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2008年8月

人間のかたち

Man07 『人間のかたち』

102×65.0cm 1996年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

たった一つの肉体の中に、沢山の『私』がいる。

何気無く、その一つ一つの『私』を、思いつく限り頭の中で羅列してみる。

・子供らと過ごすときの母親の『私』

・学校や地域で活動するときの保護者としての『私』

・会社で仕事をするときの、社会の中の大人の『私』

・友人と他愛無いおしゃべりをする、ちょっと油断している『私』

・仏壇に合掌し、二度と戻れない過去に囚われている『私』

・誰とも接しない静かな時間に、心の整理をしたり空想を楽しむ丸裸の『私』

・月に一度、受診先の病院で対話するときの、医師と自分に対してすっかり冷めてしまっている『私』

次から次に、色々な『私』が浮かんできて、羅列するときりがない。

接する相手や状況によって、無意識に自分の中の沢山の引き出しを開けて、その場にふさわしい『私』を自動的に選択し他人と接しているのだなと、改めて知る。

どれも全部『私』なのに、どれが本当の『私』なのか分らなくなる。

そんな時、ふと頭の中に作家・中山可穂氏が浮かんでは消える。

彼女は、丸裸の自分を外に向かって見せるのに、どれだけの勇気と時間を要したのだろうか。

初めは単なる『吐露』だとしか思えなかった彼女の作品は、脱皮を繰り返しながら、徐々に『自信に満ちた一人の人間としての私』の作品に変わり始めている。

どの時点でも、中山可穂氏は彼女自身であって、他の誰でもないのは自明の理ではあるが、この先、彼女の作品がどんな変化を遂げていくのか、とても楽しみだ。

あせらず、ゆっくりと新刊を待ち続けたい。

 サイゴン・タンゴ・カフェ サイゴン・タンゴ・カフェ  中山可穂
販売元:セブンアンドワイ
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人間のかたち

Man10 「人間のかたち」

102×65.0cm 1996年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

出勤のため、バス停に立つ。

朝から照りつける太陽に背中を焼かれ、汗が胸元を流れ落ち、大変気持ちが悪い。

ワシワシワシ…と、狂ったように反響し続けるセミの鳴き声になす術もなく、腕時計とセミを交互に睨みつけながらバスを待つ。

一日中ビルの一室に閉じこもって仕事を終えた後、退社のために、朝とは逆方向のバス停に立つ。突然、轟音と共に傘を突き破らんばかりの大粒の雨に見舞われ、濡れ鼠になり帰宅

こんな酷い一日が、八月の初めからずっと続いている。異常気象とか観測史上初の記録とか、そんな言葉に、もう飽き飽きしつつある。

『地球のかたち』が変われば、当然、そこで暮らす『人間のかたち』も変わっていくだろう。

これ以上、酷い状態になりませんように…などと思いながら、娘の夏休みの宿題『エコ日記』なるものを横目で見ながら、苦笑い。

『今日、地球のために頑張ったこと』…そんなものを書き出している彼女であるが、空調の効いた家の中で、一日中テレビゲームやパソコンなどで遊びながら過ごしている、典型的な現代っ子のひとりである。

この形ばかりの嘘っぱちのエコ活動も、子供にとっては大切な提出物のようである。

夏休みもあと僅か。

多くの子供らが、父親や母親と共に『にわかエコ活動家』や『にわか科学者』に変身する時期が、今年もまたやってきた。大人も子供も大忙しのことだろう。

 どーでもいいけど どーでもいいけど
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Triceratops-恐竜

Mon09 Triceratops

F150 1987年制作

Mixed Mediums on Plaster Panel

夏バテ進行中。

お腹に何か知れないものがあると医者に言われ、病院であちらこちらといじりまわされる事になった。

「子供を残しては死ねないぞ。あと10年は生き残るぞ」

誰に対しても何の責任もなく、もっと孤独であったなら、どんなに楽だろうかと、ふと思う。

ああ、夏バテ、ますます進行中…。

六十三年前の八月六日。広島に原子爆弾が投下された。

遠くで起こる出来事は、身近な死とは直結しない。

原爆を落とすという行為は、遠くの遠くの海の向こうの出来事で、非現実のゲームの世界に近いのかもしれないな、そんなことを思いながら、どろりと溶けていく『Triceratops』をじっと眺める。

逝ってしまった人と、残された人。

迎え火をたいて、食物を供え、自宅に祖先や死者を迎えて祭る準備に入る。

いつの間にか、盂蘭盆会が目の前になっていた。

夕凪の街桜の国 Book 夕凪の街桜の国

著者:こうの 史代
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