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エイ

Fishmantabond04_4 「エイ」

60.0×73.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

今泉の東京藝術大学時代の友人、金藤 櫂さんが本を書いたというので、さてどんな内容だろうかと、柄にもなく『詩画集』などというものを購入してみることにした。

本を持参で会いに行けば、サインをしてくださるというので、さっそく購入した詩画集を持って金藤氏のもとへ…。

大変快活で気さくな方なので、二年ぶりの再会にも関わらず、オーバーアクションで表情豊かに歓迎してくださった。(好き放題に注文を付けて、ちゃっかりサインを頂いた私も私ですが…)

鉛筆によるモノトーンの世界に、金藤氏が綴った詩が添えてあって、気に入った絵から、あるいは心に留まった文章からと、パラパラとめくりながら、のんびりと楽しめる詩画集になっている。

タイトルは『歩く人』、副題は-あなたへのやすまり波-である。

本の最後に「着陸地点」と題して、金藤氏のモノトーンへの想いが書いてあり、これが今泉作品と全く対照的な世界観を持っているので、なかなか興味深く面白かった。

ある年齢を過ぎてから、詩集というものを手に取る機会がめっきり減ってしまっていたが、金藤氏の詩画集を楽しんでいるうちに、谷川俊太郎氏の詩集の中で一番好きな一編を思い出し、急に読み返したくなって本箱を引っ掻き回してしまった。

タイトルは『灰についての私見』(「定義」より)である。

そして、ふと気付く。

ああ、そういえば、小学校は『読書週間』真最中だったな…。雑事にかまけているうちに、世間様は、もうすっかり読書の秋へと突入しておりました。

<灰についての私見> 谷川俊太郎  集英社文庫 谷川俊太郎詩選集2より

どんなに白い白も、本当の白であったためしはない。一点の翳もない白の中に、目に見えぬ微小な黒がかくれていて、それは常に白の構造そのものである。白は黒を敵視せぬどころか、むしろ白は白ゆえに黒を生み、黒をはぐくむと理解される。存在のその瞬間から白はすでに黒へと生き始めているのだ。

だが黒への長い過程に、どれだけの灰の諧調を経過するとしても、白は全(まった)い黒の化するその瞬間まで白であることをやめはしない。たとえ白の属性とは考えられていないもの、たとえば影、たとえば鈍さ、たとえば光の吸収等によって冒されているとしても、白は灰の仮面のかげで輝いている。白の死ぬ時は一瞬だ。その一瞬に白は跡形もなく霧消し、全い黒が立ち現れる。だが―

どんなに黒い黒も、ほんとうの黒であったためしはない。一点の輝きもない黒の中に目に見えぬ微少な白は遺伝子のようにかくれていて、それは常に黒の構造そのものである。存在のその瞬間から黒はすでに白へと生き始めている。

歩く人―あなたへのやすまり波 Book 歩く人―あなたへのやすまり波

著者:金藤 櫂
販売元:丸善プラネット
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コメント

「灰についての・・・」、
ああ、ほんとうだ、と思いました。

先週から隣の市の発掘現場に作業員で出ています。
「土の色の境目を見ながら掘る」と言われました。
なんかさっぱりわからん、と思ってたらプロの発掘技師もわからんといっていました。
陽射しがきつすぎて、土の色が見にくいのです。
でも普通の地面と遺構では土の色が違うんです。
黄土色の土とこげ茶の土、その境目がもやもやしてどうもわからんのですが、たしかに違うのです。

・・・現場は非常にしんどいですが、興味深いです。

ゆえあって現場に出てるのブログにかけないので、私信っぽく書いてしまいました。
どうも(^^)

投稿: 竹林たぬき | 2008年10月19日 (日) 08時07分

>でも普通の地面と遺構では土の色が違うんです。
黄土色の土とこげ茶の土、その境目がもやもやしてどうもわからんのですが、たしかに違うのです。

>ああ、その「たしかに違うのです」という空気を、私も共有してみたい。 
言葉では表現できないし、だからといって実際に「さあ、ここです」と指し示し、くっきり形にすることもできない。

だけれど…「たしかに違う」というのが感覚的にわかるっていうのは、凄いよね(*゚ー゚*)凄いことだよね。 感動。。。


投稿: 芸術を愛するブタ | 2008年10月19日 (日) 21時52分

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