カテゴリー「文化・芸術」の84件の投稿

ELEPHANT ACCIDENT ―象の災難

Ele10_2 「ELEPHANT ACCIDENT ―象の災難」

FUTON Painting Installation

 福岡県立美術館於 (1993年制作) 

天井からぶら下がった、切断された象の足。

切断部分からドロリと流れる赤い血が印象的な作品だった。

今泉の死後、東京藝術大学時代の恩師である、野見山暁治先生から一通の手紙を頂いた。

なんであんな若さで 足早やに去っていったものでしょう。

仕事はこれからの可能性を感じさせる 荒削りなものであっただけに 今泉さんの死は 本当に間違いであったような気がします。

私は象の足のオブヂェが好きでした。

できるならば 本学でやらしたかった。

ま、こんな希望を 今ごろ愚痴っぽくのべても致し方ない。

なんとしても 元気を持って生きて下さい。

野見山暁治

…なんとしても 元気を持って生きてください

― もう駄目だ。

そんなことを思った日、幾度この言葉に助けられたことだろう。

こんなに力強く、優しい言葉に触れたことはなかった。

いまでも、この言葉に支えられながら、なんとしても元気を持って生きていきたいと、そう思いながら日々を紡いでいる。

まもなく、今泉がいなくなって、5度目の夏がやってくる。

息子、まもなく14歳。

手がひとまわり大きくなった彼の次の目標は、ナザレー。

娘、まもなく11歳。

身体が三倍ほど大きくなった彼女のとりあえずの目標は、母より体重を軽くすること…(;´д`)トホホ…

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ELEPHANT ACCIDENT ―象の災難

Ele12 「ELEPHANT ACCIDENT ―象の災難」

FUTON Painting Installation

2000年展示 福岡県立美術館

美術館の床に、切断され赤く染められた『象の頭部』が一対。

天井に向けて鼻を高く上げ、雄叫びを上げる。

15年以上前に制作され、以後、様々な会場で雄叫びを上げ続けた『象の頭部』。

最後の展示は、いつだったろうか…

今泉の死後、遺作整理の際に、小さく折りたたまれて、作業場の倉庫に放置されていた『象の頭部』を発見。

ドロリと溶けて赤黒く固まった『象の頭部』は、まるで本当の肉塊のようで、こわくて手を触れられず、そのまま倉庫の一角に置き去りにしてきてしまった。

ちゃんと供養をしてあげなければ、『象の頭部』は永遠に雄叫びを上げ続けたまま、心安らかに眠る時間をもてないのかなぁ…

そんなことを思っている間にも、時計の針はチクタク動いて…気が付いたら、もう4年。

今泉の遺児たち、血の通った人間の子どもは、若芽をぐんぐん伸ばして成長し、この4年で、すっかり逞しくなった。

後退はしても、前進はしない母を横目で見ながら、この夏、息子は母の背丈けに追いつくでしょう。

嬉しくもアリ、寂しくもアリ。

さて、わたしも、まだまだ頑張らねば。

『象の頭部』に合掌。

プーさんの鼻

著者:俵 万智

プーさんの鼻

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The Tree-浄水場の木

Tree14 The Tree-浄水場の木」

F6号 2004年制作

また一つ歳をとりました。

そして、今泉との年齢差が、またひとつ縮まりました。

そのうち同級生になって、気が付いたら彼よりずっと『お姉さん』になっているのだろうな。

誕生日の贈り物に、友人が本をくれました。

本の名前は『納棺夫日記』

アカデミー賞を受賞した映画『おくりびと』の原点になった本です。

死者を棺に納める仕事に就いた著者が綴った日記をもとに構成されています。

誕生日の贈り物には、ちょっと「おい、おい。(・_・)エッ....?」の内容ですが…(笑)

しかし、すっかり気に入って『なかなかの頂き物』となりました。

影の薄くなりつつあるわたしに、

「死中に活を求めよ」と、そう説教をしたかったのではないかなぁ…

まあ、ようするに

「しっかり生きるんだぞー」と言いたかったのではないかなぁ…などと勝手に解釈しているところです。

文章が簡潔で美しく、何度も読み返したくなる本でした。

映画…観ておけばよかったな。

遠いある日の『浄水場の木』は、誰に見られるわけでもなく、気に掛けられるわけでもなく、ただひっそりと、地球の一部としてその地に繋がり、静かに立って生きていました。

納棺夫、青木 新門氏のようだと、ふと、そう思いました。

わたしは、今日も無事に生きおおせて、日々是好日、全てのものに感謝です。

納棺夫日記 (文春文庫) Book 納棺夫日記 (文春文庫)

著者:青木 新門
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The Tree-老木

Tree03 The Tree-老木」

F6号 2004年制作

突然の初夏の陽気に、身体がびっくり。

環境に適応できない身体になりつつあるなぁ…と、老いを実感。

春疾風も薫風も青嵐も…

やってくる風に「ようこそ」と、ワクワクドキドキしたのも、遠い昔のこととなりつつある。

老木の周りは、草さえ生えていない静かな空間。

長く伸びた影だけが、老木が実在することを教えてくれる。

ふと、振り返る。

わたしの影は、ちゃんと長く伸びているだろうか…(苦笑)

さて、80歳を過ぎても、今なお『創造の翼』で飛び続ける洋画家、野見山暁治。

福岡県立美術館でコレクション展が開催されます。

初夏の陽気に誘われて…是非、足をお運び下さいませ(*v.v)。

Img077

福岡県立美術館コレクション展

特集:野見山暁治―エソラのかたち

4月18日~6月28日

詳しくはこちら→展覧会

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The Tree-杜の象

Tree07 The Tree-杜の象」

F6号 2004年制作

今泉の最後の作品になった『The Tree』シリーズを描くために、よく近隣の神社の杜へ、木のスケッチに出かけた。

今泉は、木の根と木肌をじっくり観察。

『象』の肌にそっくりな『木肌』を見つけると、大喜びで

「おいおい、ココに象さんがおるよ」

と、皆を呼ぶ。

子どもらは、木の実とアリの巣を探して、地面をじっくり観察。

アリの巣を見つけると

「ねえねえ、ココにアリのおうちがあるよ」

と、皆を呼ぶ。

大人と子どもが一緒になって、何故だか皆、それぞれが地面に張り付いてばかりの杜の中。

ちょっと頭をもたげれば、空は抜けるほど青いのにねぇ…

と、母は思いつつ、それぞれの「おいおい」「ねえねえ」に付き合うのだった。

遠い遠い昔のことで、今は「おいおい」の声も聞くことはない。

早朝、職場へ向かうバス停で、すぐ隣の立ち木の木肌を見ながら、ちょっとだけ感傷に浸ってみたりする。

…今年の春は、まだまだ寒い。

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The Tree-春疾風

Tree09 「The Tree-春疾風」

F6号 2004年制作

杜の木々の間を駆け抜ける春疾風。

小さな芽には、大変な試練なのかもしれないが、それをしなって受ける若木に、自然の中で生き抜く力強さを感じ、

わたしも、ちょっと頑張ってみようかなぁ」

なんて思ったりもするのだが…

やっぱり、この春の冷たい突風は、いささか苦手で、

「早いとこ薫風に変わらないかなぁ」

というのが、本音だったりするのであります。

頭のうちどころが悪かった熊の話

著者:安東 みきえ

頭のうちどころが悪かった熊の話

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The Tree-青に溶ける

Tree12_5 The Tree-青に溶ける」

F6号 2004年制作

木の名は「アメリカフウ(アメリカもみじ)」 

始めは直径20センチ、高さ2メートル程の幼木だった。

風や雨…容赦ない自然の力に鍛えられ、じっくりじっくり、その地に根を伸ばし、今では大きな立ち木となった。
.
。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

一年前に、そんな記事を書いた。

アメリカフウは天空に向かって伸び続け、もう人間の手など必要のないところで、自然の法則に従って生きている。

いつまでもたっても後ろ向きの感情に支配され、同じ場所に留まっているのは、人間ばかりのようである。

アメリカフウの下に立ち、天を見上げる。

枝も葉も、天空の青に溶け、眩しいくらいの生命力に満ち溢れていた。

今泉の急逝からもうじき四年。

遺児らにとって、父親はすっかり『写真の人』になってしまった。
今年の春は、時間薬が少しずつ効果をあらわして、皆がそれぞれに自分の行く先を見つめ始める、力強く眩しい春になると良いな…

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The Tree-桂の木

Tree10 The Tree-桂の木」

F6号 2004年制作

庭の片隅に、桂の木が1本ありました。

豪快に枝を伸ばし、空へ向かってぐんぐん伸びていくアメリカフウとは対照的に、カツラは可憐な立ち姿で、ひっそりと、静かに静かに成長していきました。

いつも病気ばかりして、心配ばかりさせられる木でした。

庭に来る野鳥たちは、逞しいアメリカフウに体を預けて囀り、枝に刺した甘い果実を美味しそうに啄ばんでは飛んで行きます。

そんな時も、カツラは変わらず、独り静かに、凛として庭の片隅に立っていました。

けれど…

春先になると、赤く美しい芽吹きをして、

「春が来るよ」と、そっと告げてくれたのでした。

この季節になると、今も元気だろうかと、毎年カツラのことを思い出します。

今年もまた、美しい芽吹きで、春を知らせているのでしょうか…。

 象は忘れない 象は忘れない
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The Tree-光の春

Tree08 The Tree-光の春」

F6号 2004年制作

どことなく春の気配を感じるのだけれど、まだまだ余寒の厳しいこの頃。

『光の春』は、もともとはロシアから来た言葉だと聞く。

長く寒い冬を過ごす国の人々が、春を待ちわびる気持ちを込めて使った言葉だとか。

まだまだ寒いけれど、春は確かに近付いている。

団地の植え込みの椿も咲いた。

杏も可愛らしいピンクの花をつけて今が満開。

花の蜜を狙ってか、ヒヨドリがピーツピーツと朝から頭上で騒がしい。

毎朝同じ時間にバス停に立つと、あちらこちらで春信をキャッチ。

ああ、早く暖かくならないかな…

Fujita 『没40年 レオナール・フジタ』展

 2009年 2月22日-4月19日

 詳しくはこちらのページから→福岡市美術館

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The Tree-木霊

Tree13 The Tree-木霊」

個人蔵 F6号 2004年制作

「木に入り込みすぎたら(感情移入しすぎたら)こんなになっちゃったよー」

と、今泉が匙を投げた木の絵シリーズの作品『木霊(こだま)』

わたしの一番のお気に入りで、名付け親を任され「わーい、わーい」と大喜び。

イタリア旅行の時に出会った、晩年のミケランジェロの未完の彫刻の前で、心が吸い取られていくような、それでいて、無二の愛について諭されるような、そんな気持ちになったときとのことを思い出し『木霊』と命名。

今泉の好きだったミケランジェロ。

ミケランジェロは生涯で4つの『ピエタ』を制作している(うち3つは未完のままです)

イタリアで最初に出会ったのは、若き日のミケランジェロが完成させた『サン・ピエトロのピエタ』

ピンと張りつめた空気の中のピエタは、その繊細さゆえに人を傷つけてしまうこともある、硝子のようなもろさと美しさが同居していて、神が舞い降りたかと思わせるような完成度の高さで、それを目にした人々の心を虜にしていた。(心を持たないものを、ただ鑑賞しただけで涙が出るという経験をしたのは、これが初めてでした)

次に出会ったのは、晩年、視力をほとんど失っていたとわれるミケランジェロの遺作ともなった、未完の『ロンダニーニのピエタ』

行く人の足を止めずにはいられない張りつめた空気を感じさせる美しさはなく、ただそこには、重く悲哀を含んだミケランジェロの影が見えるような気がしただけだった。

けれどそこには、心が吸い取られていくような、それでいて、無二の愛について諭されるような何かがあると感じたのを今でも鮮明に覚えている。

そして、この『ロンダニーニのピエタ』への回想から、作品タイトルを『木霊』としたのだった。

『木霊』はすぐに、あるご夫妻の目に止まり、完成してから数ヶ月のうちに我が家のアトリエを出て行ってしまった。

ずいぶん昔に、大切な息子さんを亡くされた経験をお持ちのご夫妻だと、今泉が静かに言っていたのを思い出す。

いつかは消えてしまう人間の、本当の幸せって、何なのだろうな…

聖母像の到来

著者:若桑 みどり

聖母像の到来

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The Tree-想い

Tree11 The Tree-想い」

F6号 2004年制作

パンドラの箱。

開けてはいけない物を、ついうっかり開けてしまいました。

沢山の過去に蓋をして、もう二度とは開けまいと、ずっとそうして頑張ってきたのに。

仕事でレコーダーが必要になるかもしれないと思い、ずいぶん長いこと使っていなかったMD(Mini Disk)を整理していたら、タイトルの記していないMDが、箪笥の引き出しから1枚だけ出てきました。

はて、これはなんだったっけ?

さっそくプレーヤーに挿入して再生ボタンを押すと、幼子のたどたどしい発音のメッセージが流れてきました。

「パパ、今日、赤いランドセルを買ったよ。幼稚園のお別れ会で世界の国の踊りを踊ったよ。上手に踊れたよ。パパ、早く元気になって、入学式には絶対来てね」

「パパ。僕はお勉強も一杯して、ママの言うことも聞いて、妹とちゃんとお留守番もしているよ。早く病気を治して帰ってきてね。パパがいないと寂しいよ」

おもわず電源を切りました。

『パパへのメッセージ~子供たち』と、すぐにタイトルを書いて、元あった場所よりも、うんと奥のそのまた奥へとMDを仕舞いました。

今泉が倒れ意識が戻らぬまま逝ってしまうまでの四十日近く、子どもらのメッセージを録音して、廃人のようになってしまった彼の耳元で流し続けたMDでした。

結局、意識は戻らぬままで「さよなら」も言えないままに、永遠の別れとなってしまいました。

「こういうものに蓋をしてはいけません」と、かかりつけの医者は言いました。

「泣くべき時に泣けない人は、あとからその何倍もの精神的な苦痛に見舞われますから」と。

そうして、一周忌が過ぎた頃、突然、手足がいうことをきかなくなりました。

他人と上手く話せなくなりました。身体中が痛んで、夜、全く眠れなくなりました。

いま子どもらを残して死ぬわけにはいかないと、身体のどこかにある病巣を早く探し当てなければと、慌てて総合病院であらゆる検査を受けました。

結局、病巣は『心の中』に巣食っていたのでした。

「こういうものに蓋をしてはいけません」

医者の言うことは、正しかったと思います。けれど、今でも蓋をあけることはできません。

このまま、肉体という器がなくなる日まで蓋をして、その日がきたら、全部一緒に今泉のところまで持っていこうかと思っています。

わたしは、静かに平穏に暮らして生きたいと、ただそれだけが願いです。

『The Tree-想い』の木は、娘の誕生にあわせて、今泉が「想い」を込めて玄関脇に植えました。

この絵にも蓋をして、ほとんど見ずにきましたが、モデルの木も、今はずいぶん大きくなっていることでしょう。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

著者:村上 春樹

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

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The Tree-庭の木

Tree02 The Tree-庭の木」

F6号 2004年制作

春信。

『ふと窓の外に目をやると、節分の日の豆打ちの残りを、雀がベランダで啄ばんでいるのが見えた。嬉しくなって窓を開けると、心なしか空気がやわらかい』…そう書いたのは一年前。

時間の流れのなんと早いことだろうか。

そして…。

今年もまた、我が家に春の訪れを告げる、一枚の葉書がやってきた。差出人はもちろん野見山暁治先生だ。

寒中お見舞

さき行き おぼろげな世相です

ともかくも 歯を食いしばって 暮らしましょう

大丈夫かな ぼく 入歯だけど

2009年 冬

みなさん 元気だろうかと 心配です。 なんか 励ましてやりたい。

    野見山 暁治

先生、また春がやってきますね。

こちらはみな、大変元気です。

失ったモノは、もう二度と戻らないということを、ようやく理解できるようになりつつあります。

…ということで、平凡な我が家の毎日にも、少しは進展がみられるようです。

ベランダの打ち豆の残りを、チュンチュンと嬉しそうに啄ばんでいる雀を見ながら、今年は野見山先生のように『つよいひと』になって、これからやってくる新しい季節を見送りたいと、そんなことを思ったりする暖かな午後であります。

(異境で癌に冒され、死の床についた妻。異文化との摩擦に苦しみながら懸命に孤独な看病を続ける画学生の夫(野見山暁治)。その壮絶な日々を日録をもとに克明に再現した、小説を超えたレシ(実録))

パリ・キュリイ病院  

著者:野見山 暁治

パリ・キュリイ病院

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アンコウ―anglerfish

Bond01アンコウ―anglerfish』

60.0×73.0㎝  1990年制作

Bond Work Mixed Mediums on Card Board

インフルエンザ大暴れ。

おかげさまで一週間、母子で自宅に閉じ込められ、天井に付いた水滴にカビが生えるほどのムンムンの加湿状態の家の中、水族館の魚よろしく暮らしておりました。

来週から、水槽を出てウィルスうようよの人間界へ復帰。

手元に残った『水族館』シリーズの魚たちも、この『アンコウ』で最後となりました。

行き先のわからない、記憶にはあるのだけれど見当たらない魚たちが何点か…彼らが元気でいてくれることを祈りながら『水族館』シリーズもようやく【完】となりました。

水族館…閉館。

(楽しみだった『蟲師』も最終巻になってしまいました。さみしい)

蟲師 10 (10) (アフタヌーンKC)

著者:漆原 友紀

蟲師 10 (10) (アフタヌーンKC)

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ウィング・フィッシュ―wing fish

Bond02 ウィング・フィッシュ―wing fish』

60.0×73.0㎝  1990年制作

Bond Work Mixed Mediums on Card Board

いつも手元においている、ボロボロの文庫が一冊。

丁寧に開かなくては、索引のページなどはもう、本体からはらりと抜け落ちそうな状態にある。

入手したのは12年前。以後、大切な情報源としてずっと手元においていて、「ええと、あれれ?」と思うたびに本を手に取る。

昔、子どもらがまだ、とても小さかった頃、庭のフェンスに『美男葛(ビナンカズラ)』と『屁糞葛(ヘクソカズラ)』が群生していて、秋になるとどちらも一斉に結実し、これらの実は子どもらの恰好のおままごとの道具となった。

ビナンカズラの雌株がつける実は大変美しく、目の覚めるような鮮やかな赤い実が、おいしそうな果物よろしく房になって蔓にぶら下がる。ヘクソカズラは、『屁・糞』カズラというだけあって、強烈な臭いを放つが、これもまた可愛らしい黄褐色の実をつけ、子どもらにとっては魅力的な遊びの材料となる。

さて、ある日、小さな子らが我が家の庭に集まって、いつものようにおままごとに熱中している姿を何気なく見ていたら…彼らは砂場用の小さなバケツに水を張り、その中にビナンカズラの実をもぎっては浮かべ、楽しそうにバケツの中を覗いていた。

「きれ~ね~!きれ~!」と喜んでいるうちは微笑ましくて良かったのだが…中の一人が突然に「おいしそ~!」と、赤い実の美しさに食欲を刺激され、バケツの実を掴んでパクンと食べてしまったのだ。

「ぎゃーっ!!」…と絶叫し、母が庭に飛び出して行ったのは言うまでもない…

しかし、こちらが子どもに食べたものを吐かせる前に、「ブベッ!!」と子ども自ら、その実を吐き出してしまった。大変苦くて、とても食べられたシロモノではなかったようだ。

ホッとしたのも束の間、違う子が「くちゃい(臭い)、くちゃい~」と、嬉しそうにへクソカズラの実をグチュグチュに手で握りつぶして、楽しそうにその汁をあちらこちらに塗りたくっている。

…生きた心地がしなかった…

正体(成分)のわからないものを、体内に取り込んだり皮膚に塗り込んだり…まだニ年ちょっとしか生きてない子らの人体に、一体どんな影響が出るのだろうか。

植物の汁に触らないこと、口に入れないこと、厳しく注意を与えてドキドキしながら子どもらの様子を見守り、夕方、何事もなさそうなのを確認してからそれぞれの親元へ返し、その足で本屋へ直行。

そこで手に入れたのが、このボロボロになった大切な文庫『薬草・毒草300プラス20』(朝日新聞社編)である。

ビナンカズラは『小枝を水に漬けると、皮に含まれた粘液でとろりとした液となり、昔はこれでちょんまげのくせ毛をなおしたことから美男葛(びなんかずら)の名が生まれたという…中略…果実を採集して日干しにしたものを南五味子(なんごみし)と呼び、保健、咳止めに一日量500グラムを煎用するが、苦味が強いので砂糖などで調味する』とのこと。

ヘクソカズラは『秋から冬にかけて目立つ果実は、つぶすと黄色い果汁が出て、しもやけによい。市販のハンドクリームに混ぜて患部に塗布しておくとにおいも気にならない』とのことであった。

ほっと一安心。

無知であることは、大切な機会を逃し、生活圏を狭めてしまうのだなと実感。無駄な禁止をせずに済んだはずのところを、無知から来る恐怖で、わたしは遊びを中断させてしまった訳だ。もちろん、苦い実を食べて吐き出した子は、実践で知識を得ているわけだが、それがなぜ食べられなかったのかを知ること、そこから先がとても大切なのだと思う。

ひと昔前なら、ご老人たちがニコニコしながら「そりゃ、良薬は口に苦しで、別に悪かもんやない」などと知恵を授けてくれることもあったろうが、現在は、ご老人たちも仕事に習い事に旅行に…と大変多忙で、のんびりと先人の知恵を授けるゆとりなどなさそうである。

健康で長寿であるというのはあり難いことだけれど、時間の流れがいつも何かしらせかせかしていて、残念に感じることも多い。

薬用植物も、扱い方や摂取量によっては毒草になりうることを忘れずに。何でもほどほどに…がよろしいようで。

薬草毒草300プラス20  /朝日新聞社/編 [本] 薬草毒草300プラス20 /朝日新聞社/編 [本]
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水玉魚―polka dot fish

Bond03『水玉魚―polka dot fish』

60.0×73.0㎝  1990年制作

Bond Work Mixed Mediums on Card Board

「現代美術家にできることは、もう、精神論で勝負すること以外に残っていない」

というのが、今泉の口癖だった。そして、それが今泉の最も苦手とすることでもあった。

どんなに新しい技法を求めても、それらは皆、実は先人が残した絵画の軌跡を辿るだけにすぎないことに気付き、自分は何も生み出していないことを知る。

カンバスに一本の平行線を引き、『未来―現在―過去』というタイトルをつける。後は、その主題について、如何に鑑賞者をうならせる饒舌な舌(精神論)が備わっているか…というのが、現代美術家の魅力となる。

今泉は、「僕が現代美術家として成功することはまずない」と言っていた。

「絵を描くのが好きで、自己満足のために描いているものに、上っ面だけの精神論をつけても、ただそれだけのものでしかないことは、作品を見ればすぐに解るだろう」

そう言いながら描き続けた作品は300点以上にのぼり、アトリエの中にぎゅう詰めにされた遺作だけが残った。

2007年に亡くなった美術史家、若桑みどり氏は自著の『絵画を読む イコノロジー入門』の中で現代美術について、

「(近・現代美術では)芸術が非常に個人的になっただけではなく、ときには、意図的に『意味』を拒否する作品も生じてくる……そのような主題をもたない作品の解釈や現代美術の理解には、知覚的心理学や精神分析学を含めた、イメージと人間の精神との関連について、また、イメージの表現方法の様々な局面についての多面的で深い洞察力が必要になる」

と述べている。この本自体は16,17世紀の西欧美術について書かれているものであるが、絵画鑑賞を趣味とする人には、貴重な「目から鱗!絵画鑑賞法会得!」的な読み応えのある内容が沢山書かれていて、大変面白いのではないかと思う。

さて…今泉の話に戻るが、50代に突入した彼の口癖は

「自然の法則に従えば、家族の中で一番先に死ぬのは僕だ。僕は芸術家として大成する口ではないが、子供たちが僕が描いてきた作品とその過程をずっと心に留め置いてくれたなら、個人的にはそれで成功だったと思う」

と言うものだった。2年後に急逝した彼の、これが遺言となってしまった。

遺言を守るため、ブログ上で遺作整理を始めてまもなく1年。

残念ながら『多面的で深い洞察力』が備わっていない身としては、ただ遺作を一枚ずつ整理することしかできないのだが、いつか遺作を全て整理し終える日がきたときに、そこに『絵を描くことに取り付かれた一人の人間の人生』を垣間見ることができたら…

そう思うと、両肩に乗っかった様々な困難を払いのけて、もうちょっと生きることに立ち向かってみようかなぁ、と考えたりする2009年の始まりであります。

絵画を読む―イコノロジー入門 (NHKブックス)

絵画を読む―イコノロジー入門 (NHKブックス)

著者:若桑 みどり

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ハリセンボン―porcupinefish

Bond04 『ハリセンボン―porcupinefish』

73.0×60.0㎝  1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

娘、10歳。

巷で囁かれる、いわゆる『ギャング・エイジ』という、大変やっかいな年齢を横行闊歩中。

あれが気に食わん、これが気に食わん!

あれが許せん、これが許せん!

あれは黒だよねと母が言えば、いいやあれは絶対に白だと答えが返ってくる…

答えるついでに、ハリセンボンも顔負けの膨れ面に、鋭いトゲで母を刺し、兄を刺し…

しかし、そんな娘も、土曜日の午後は大変聞き分けが良く、しおらしい。

母の機嫌を損ねると、毎週末のお楽しみである『土曜日の午後の本屋さん』へ連れて行ってもらえないからだ。

この腹立たしいギャング娘は、実は大変計算高い暴れん坊将軍なのでもありました。

お目当ての本は『青い鳥文庫』コーナー。

色々なシリーズで、児童の心を鷲掴み(?)の『青い鳥文庫』だが、娘が凝っているシリーズは…

「うへ。やめようよー、それ」

と、ついつい口を出してしまいたくなる内容のもの。

宮沢賢治に太宰治といった名作シリーズから、宮部みゆきといった現代小説まで揃っているんだからさ…ね、それは、やめとこうよ…。

と、言いたくなるのをぐっとこらえて、娘の差し出す本を抱えてレジに並び、この瞬間にしか、良い子ぶった可愛らしい態度をみせない詐欺師の娘に、黙って騙されてやることにしている。

ギャング・エイジの暴れん坊を、こうまで大人しくさせてしまうとは…

恐るべし、『青い鳥文庫』…で、あります。

『泣いちゃいそうだよ』シリーズは、進研ゼミに連載されていたものらしく、大人気シリーズなんだとか…

(ワタクシ未だに、山積みの『泣いちゃいそうだよ』シリーズに一度も手をつけず、他所の母友から聞きました。ヾ(_ _*)ハンセイ・・・)

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著者:小林 深雪
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タコ―octopus

Mon02 『タコ―octopus』

F150 1987年制作

Mixed Mediums on Plaster Panel

音と色彩と言葉の話。

息子13歳。只今のピアノレッスンの課題曲は、ドビュッシーの『アラベスク1番』

『ピアノの詩人』と呼ばれるショパンに対し、『ピアノの画家』と呼ばれるドビュッシーは、音楽分野においての印象主義の創始者であり完成者とも言われている。

さて、息子の『アラベスク1番』の、なんと豪快で雑で御粗末でイライラする弾きっぷりであることか…。

右手さんと左手さんが、転んで、跳ねて、滑って、濁って…

「ピアノに何か恨みでも?」と聞きたくなるほどガンガン鍵盤を叩く日々。

頭を抱えられた先生(美人で優しい息子のお気に入りの先生)から出された先週の宿題は…

「ドビュッシーがどういう人で、どんな時代に生きた人か、この曲が生まれた時代背景を知ると、この曲に接するときの意識が変わると思うよ。ちょっと、ドビュッシーについて調べてみてね」

という、テクニック以前の問題をクリアしなくては弾けませんよー、というものだった。

全く、おっしゃるとおりです。

絵画における印象派運動が盛んであった時期のパリで、詩人や画家と親交を結び、その影響によって、『印象派の絵画』に通ずる『印象派の音楽』を完成させたドビュッシー。

『アラベスク』はその初期の作品で、彼の表現する印象的な音は、印象的で美しい色彩と結びついているのだ。

詩人の谷川俊太郎氏が、フェルメールの作品に影響を受けて『灰についての私見』を詠ったように…

音と色彩と言葉は、相互作用のもと、ひとつの芸術となっているのだ。

音を聴き、色彩のイメージが広がり、言葉が紡がれ…

言葉から音色が生まれ、音色から色彩が生まれ…

考えていると、何だかとても嬉しくなった。こんなに嬉しいことはない、と思った。

息子の『アラベスク1番』が、どんな絵に仕上がり、どんな詩になるのか。

道はまだまだ険しいけれど、ピアノを通して、そういうことを少しずつ理解できるようになれば、きっといつか、父親が求め続けたもの、求めても答えを出し切れなかったもの…

それらを理解できる日が、父親の遺した作品たちの声を感じることのできる日が来るのかもしれない。

来年がよき年でありますように…。

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サメ―shark

Bond15 『サメ-shark』

73.0×60.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

小学校に中学校…身近なところでインフルエンザ発症の報告が届き始め、日々、戦戦恐恐。

↑↑インフルエンザウィルスって、こんな感じ?

ああ、コワイコワイ。

海に入らなきゃサメには出会わずに生きていけるけれど、ウィルスに出会わずに暮らしていくのって…ちょっと無理。

マスクに、うがいに、手洗いに…ウィルスに出会っても、どこかで振るい落として、何とか逃げ切りたいものだと、母子で戦闘態勢へ…スイッチ・オン!

…しかし、人間も怖いものです。

できれば出会いたくない『ブレストの乱暴者』の主人公、水夫のクレル。

何度読んでも良く理解できない言葉の数々…。何度読んでも、意味不明の主人公の心の動き。

それでも、何度も挑戦して再読してしまうのは、この本が澁澤龍彦氏の翻訳で、わたしの愛する(故)中島らも氏が愛読していた本だから…というつまらない理由。

考え事が多すぎて人生が面倒臭くなったら、只管にジャン・ジュネに向かうのも、なかなかよいかも。(わが身の日常の穏やかさに、退屈の素晴らしさに、小さな満足感が湧いてきたりします( ´_ゝ`)フフフーン)

ブレストの乱暴者 (河出文庫) Book ブレストの乱暴者 (河出文庫)

著者:ジャン ジュネ
販売元:河出書房新社
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金魚-goldfish

Bond06 「金魚-goldfish」

60.0×73.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

あちらこちらで、発熱やら下痢やら嘔吐やら…病気の話が聞こえてくるようになったなぁ~と思っていたら、息子が大当たり・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。

上ったり下がったりの熱を繰り返し、闘病中の彼。

真っ赤なほっぺにウルウルの瞳をして、冷たい水分を求めてフラフラと台所を徘徊する姿は、まるで「金魚-goldfish」に瓜二つ。

友人がお見舞いに届けてくれた本をもってベットでウトウトしている様子だったが、熱を測りに部屋を覗くと既に了読しておりました。

「面白かった?」と聞くと

「読みやすかった。でも、これ携帯小説みたいよ。携帯小説は読まない方がいいって学校で言われたっちゃけど」とのこと。

それは内容の問題でして…云々。まだまだ「お子ちゃま発想」の息子に大笑い。

本の名前は『医学のたまご』

『チーム・バチスタの栄光』で脚光を浴びた、海堂尊氏の子供向け医学ミステリーで、大人でも軽~く読める、なかなかの娯楽本に仕上がってます。

(ちなみに、これは携帯小説ではなく、医学専門雑誌『日経メディカル』に連載されていたものです。横書きの本は携帯小説だと思っている愚かな息子…(;´д`)トホホ…)

病気でもしなきゃ、なかなか本を読む暇もない多忙な中学1年生には、とても良い休息を兼ねた闘病なのかな…と前向きに考え看病中。

しかし…「頼むから母には移さんでくれよー」と、加湿器を最強にして子どもを個室に閉じ込める都合の良い鬼母でありました。

医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!) Book 医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!)

著者:海堂 尊
販売元:理論社
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クラゲ―jellyfish

Bond05_2 「クラゲ-jellyfish

73.0×60.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

オワンクラゲから緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見し、ノーベル化学賞を受賞した米ボストン大名誉教授、下村脩さん。

それまで水族館では脇役扱いだったクラゲが、思わぬところでスポットライトを浴びることに…

福岡市水族館では、夏の海水浴時期にあわせ、クラゲ被害の対策として、アンドンクラゲ、ミズクラゲ、スナイロクラゲ等の展示をしていますが、残念ながらオワンクラゲは鑑賞できないようです。

しかし、発光しなくてもクラゲは十分魅力的…ということで、今泉の遺作品にもモチーフとして扱われています。

九州にも初雪が降り、今年もまた、もがリ笛を子守唄に、布団を頭からすっぽり被って眠る子どもたちを見守る季節が到来。

ああ…さむい。

…と、独り言ちている間に、世間様は受験シーズンに突入。

もう頭がパンク状態で、うなずく度に覚えた単語や公式がポロリと落っこちてしまう少年たちよ。

本川先生と一緒に歌いながら、高校生物の基本をマスターするというのは、どうかしら。

我が家の御宝本。⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーーーン

歌う生物学 必修編 Book 歌う生物学 必修編

著者:本川 達雄
販売元:阪急コミュニケーションズ
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イルカ-dolphin

Bond11 「イルカ-dolphin

73.0×60.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

足先が氷のように冷えて、布団に入ってもなかなか寝付けないという、最も苦手な季節がやってきた。

水族館のイルカショーのことを思っただけで、体が芯からゾコゾコと冷えてくる(苦笑)

身体が温まって眠りが訪れるまで、しばしシェークスピアを読む。

『あらし』を読んで、人を許すことの大切さに「うん、うん」と頷くが、まだ眠れない。

『リア王』を読んで、美しく老いることの難しさを実感しながら、

真実を見極める目を養いたいものだなぁ~

理性が年齢と共に溶解するのを何とか防ぎながら、老いて行きたいものだなぁ~

などと思いつつ、自分の来し方を振り返ってみたりしているうちに、何となく夢の国へ。

子どもを捉まえ

「ママもそのうちに老婆になるから、『リア王』を読んで、今から対策を練っておきなさい」

と言うと

「ええ~。いやだぁ~。その本、表紙が怖いもん」

…全然頼りにならない10歳と13歳でした。あーあ。

人は60歳から若くなりはじめるが、それでは手遅れだ―パブロ・ピカソ(フランスの画家)

『心にトゲ刺す200の花束』より

心にトゲ刺す200の花束 心にトゲ刺す200の花束

販売元:楽天ブックス
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アシカ-sea lion

Fishasikabond02

「アシカ-sea lion」

73.0×60.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

寒風吹きすさぶ中、ガタガタ震えながらアシカショーに付き合わされたのも、遠い思い出となりまた。

アシカも子供も大して変わらないや。うーん、どちらも可愛い。

と、ちょっと離れた目線で両方の生物を眺めていたのも、遠い思い出。

子供は自分の世界をどんどん拡げて、今度はあちら側が、ちょっと離れた目線で大人という生物を観察している模様。

なかなか面白い、子育て駆け引き時代に突入しました。

『少年アシベ』の著者、森下裕美さん。

随分昔のことですが、この漫画の主人公アシベ少年のペット、ゴマフアザラシの「ゴマちゃん」というキャラが大ヒットしました。

その森下裕美さんが、手塚治虫文化賞短編集、文化庁メディア芸術最優秀賞をW受賞した最新漫画『大阪ハムレット』

「これが『少年アシベ』の、あの森下裕美?」と、思う人もいれば、

「ああ、『荒野のペンギン』の森下裕美が帰ってきた!」と、思う人もいるだろうな。

そんなことを考えながら、『大阪ハムレット』を一気に読み終えて…

なんだか心がズドーンと落下してしまったので、本家本元「シェイクスピア」の戯曲『ハムレット』を読み直し、水底でブクブク彷徨う心を、水面にプカプカ浮かぶくらいまで復活させてから、布団にもぐって早寝をしました。

「To be or not to be, that is the question」

『大阪ハムレット』を読むと、感動して寝付けないという人もいるようで…読後感は色々です。晩秋の夜長に、浮くか沈むか、お試し半分に一読いかが?

大阪ハムレット 2 (2) (アクションコミックス) Book 大阪ハムレット 2 (2) (アクションコミックス)

著者:森下 裕美
販売元:双葉社
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笑うシロナガスクジラ

Fishkujirabond02 「笑うシロナガスクジラ」

60.0×73.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

歩道を歩きながら「ちっ」と舌打。

ものすごい悪臭に思わず立ち止まって、靴の裏を見る。

「あー、もうっ!

靴の裏に粘りついた猫の糞を想像し、げんなり。

…と、てっきり猫の糞を踏んでしまったと思い込み、独りでイラついていたら、なんと悪臭の正体は銀杏でした。

「そうか、そんな季節かぁ」

ちょっと嬉しいような、寂しいような…そんな気持ちになったのは、先々週のこと。

ところが、今週に入り突然気温が下がり始め、夜明けの冷え込みに耐えかねて、大変面倒くさい布団の入れ替え作業を余儀無くされてしまった。

そして…得意の「冬眠態勢」に入る。

ゆえに、ギャラリーも暫くは『水族館』巡りです。

クジラは昔 陸を歩いていた―史上最大の動物の神秘 (PHP文庫)
Book
クジラは昔 陸を歩いていた―史上最大の動物の神秘 (PHP文庫)
著者 大隅 清治
販売元 PHP研究所
定価(税込)   ¥ 581

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エイ

Fishmantabond04_4 「エイ」

60.0×73.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

今泉の東京藝術大学時代の友人、金藤 櫂さんが本を書いたというので、さてどんな内容だろうかと、柄にもなく『詩画集』などというものを購入してみることにした。

本を持参で会いに行けば、サインをしてくださるというので、さっそく購入した詩画集を持って金藤氏のもとへ…。

大変快活で気さくな方なので、二年ぶりの再会にも関わらず、オーバーアクションで表情豊かに歓迎してくださった。(好き放題に注文を付けて、ちゃっかりサインを頂いた私も私ですが…)

鉛筆によるモノトーンの世界に、金藤氏が綴った詩が添えてあって、気に入った絵から、あるいは心に留まった文章からと、パラパラとめくりながら、のんびりと楽しめる詩画集になっている。

タイトルは『歩く人』、副題は-あなたへのやすまり波-である。

本の最後に「着陸地点」と題して、金藤氏のモノトーンへの想いが書いてあり、これが今泉作品と全く対照的な世界観を持っているので、なかなか興味深く面白かった。

ある年齢を過ぎてから、詩集というものを手に取る機会がめっきり減ってしまっていたが、金藤氏の詩画集を楽しんでいるうちに、谷川俊太郎氏の詩集の中で一番好きな一編を思い出し、急に読み返したくなって本箱を引っ掻き回してしまった。

タイトルは『灰についての私見』(「定義」より)である。

そして、ふと気付く。

ああ、そういえば、小学校は『読書週間』真最中だったな…。雑事にかまけているうちに、世間様は、もうすっかり読書の秋へと突入しておりました。

<灰についての私見> 谷川俊太郎  集英社文庫 谷川俊太郎詩選集2より

どんなに白い白も、本当の白であったためしはない。一点の翳もない白の中に、目に見えぬ微小な黒がかくれていて、それは常に白の構造そのものである。白は黒を敵視せぬどころか、むしろ白は白ゆえに黒を生み、黒をはぐくむと理解される。存在のその瞬間から白はすでに黒へと生き始めているのだ。

だが黒への長い過程に、どれだけの灰の諧調を経過するとしても、白は全(まった)い黒の化するその瞬間まで白であることをやめはしない。たとえ白の属性とは考えられていないもの、たとえば影、たとえば鈍さ、たとえば光の吸収等によって冒されているとしても、白は灰の仮面のかげで輝いている。白の死ぬ時は一瞬だ。その一瞬に白は跡形もなく霧消し、全い黒が立ち現れる。だが―

どんなに黒い黒も、ほんとうの黒であったためしはない。一点の輝きもない黒の中に目に見えぬ微少な白は遺伝子のようにかくれていて、それは常に黒の構造そのものである。存在のその瞬間から黒はすでに白へと生き始めている。

歩く人―あなたへのやすまり波 Book 歩く人―あなたへのやすまり波

著者:金藤 櫂
販売元:丸善プラネット
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人間のかたち

Man06 『人間のかたち』

67.0×82.0cm 1996年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

古い大学病院の廊下にて。

今、私が通院している市内の大学病院は、旧棟と新棟に分かれていて、二階部分でその二つが結ばれている。

基本的に、外来や新患診察は旧棟で、入院や最新の医療機器を使用した検査は新棟で行なわれているようである。

旧棟の天井は低く、ところどころ外れかかったパンチング加工の天井パネルが、行きかう人の頭上数十センチのところで、辛うじて天井にぶら下がっているのが危なっかしくて、ついつい目がいってしまう。

その天井パネルとは対照的に、たった今取り替えましたといわんばかりのピカピカの蛍光灯が、長い廊下と並行して、建物の端から端まで続いている。

廊下に沿って連なる診察室の扉は、幾層にも塗り重ねられた塗料で厚ぼったくなっていて、その扉の取っ手と蝶番の部分だけが新しく、不釣合いに光っているのが印象的だ。

長い長い廊下に沿って、診察室の扉と扉の間に、待合の長椅子が、これまた建物の端から端までずらりと並んでいる。

その長椅子にぽつんと座り、自分の名前が呼ばれるのを、静かに待ち続けるのが、患者に与えられた役割だ。

待ち時間というのは、いつも心が空っぽになる。これから起こるであろう色々なことに迅速に対処できるよう、少しの間、心に休息を与えているという感じだ。

そんな空っぽの心で長椅子に腰し掛け、長い廊下を端から端まで、何の気なしに眺めていると、よく磨きこまれた古い廊下に、周りの様子が映りこんでいることに気が付いた。

新棟とは建物全体の空気がまるで違うものだなと思いながら、蛍光灯の光が反射する長い廊下を見つめる。

そして…古い大学病院の廊下にて、小さな発見をした。

廊下にくっきりとストレッチャーの轍が残っていて、ベージュのリノリウムの廊下が、轍に沿って波打っているのである。

一体、何百回、いや、もしかしたら何千回、患者を載せたストレッチャーがこの廊下を行き来したのだろうか。

簡単な病気や怪我の人もいれば、そのストレッチャーで運ばれたまま、二度とは帰ってこなかった人や、未だに重病と闘い続けている人もいるのかもしれない。

廊下の轍は、病院の歴史を物語っていると共に、その時確かにそこにいた誰かが残した生の軌跡でもあるのだろう…と、そんなことを考えてしまった。

しかし…病院というのは、目的が自身の病気の受診でも、誰かの付き添いでも…やっぱり苦手で、なかなか慣れないなぁ、と苦笑するばかりである。

 海堂尊/チーム・バチスタの栄光 海堂尊/チーム・バチスタの栄光
販売元:HMVジャパン
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人間のかたち‘97

Man02 『人間のかたち`97』

105×70cm 1997年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

今泉がなくなってから3年半。

生前の友人や同僚から、新しい芸術活動を開始した旨を記した、展覧会の案内状が届いた。

『コンテンポラリーなアートの風を感じてください!』

そう銘打った展覧会は、福岡発のアート専門雑誌『ARTing』の創刊に併せて開催されるようだ。

風はいつも吹いている。

「芸術に新しい風を!」

「政治に新しい風を!」

「教育に新しい風を!」

探求するという行為は、生きる力を伴っていて、風はいつもその背中を押している。

9人の美術家たちによる『福岡・芸術文化の創造と思考』が、どんなふうに新しい風を呼び込むのか、あるいは新しい風に押され発展していくのか…

是非展覧会に足を運んで確かめてみたいと思っている。

Kaze 『ARTing』展 9人の美術家たち  ギャラリー風

2008.10.6(mon)~12(sun) 10:30am~7:30pm(最終日は5:00pmまで)

出品者 

池松由理、金藤 櫂、成清美朝、樋口英資、平山隆浩

古本元治、水永宗勝、三原信彦、宮川凛子

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人間のかたち-Hips&Legs

Man03 『人間のかたち-Hips&Legs』

227×182cm 1996年制作

Mixed Mediums Paiting

茹だるような暑さの盂蘭盆会を何とか乗り切り、ようやく秋の気配がみえ始め、ふと気付けば、世間はもう秋彼岸。

時間の経過の早さに驚くばかりだ。

我が家の居間には小さな仏壇があって、子供らの玩具に囲まれて、とても場違いなところに鎮座している。

仏壇の中には位牌が一つ。父親の戒名が刻まれている。

突然の死によって永遠に出会うことの無くなった父親と子供らを繋ぐ大切な手段として、遺骨を引き取り、供養を引き受け、納骨堂と自宅に仏壇を購入した。

父親と別れたのは、息子が小学3年生、娘が幼稚園年長児のときである。

子供らは、父親の遺作に囲まれ、時折、父親の友人から思い出話を聞かせてもらい、仏壇に合掌し、納骨堂の掃除に行き…そんな風にして父親のいない時間を過ごしてきた。

…こうして時は流れ、気が付けば、息子は中学1年生、娘は小学4年生となっていた。

思い出は永遠に彼らの心の中にあって、この先、彼らを何らかの形で助けてくれるであろう…などと思っていたのだが、先日娘が、学校の宿題で引っ張り出して来たアルバムを見ながら、

「パパって、この人よねー?」

と指差すので、思わず「ええー!?」と驚きの声をあげてしまった。

優しかった『パパ』がいたことは覚えていても、いなくなってしまった『パパのかたち』は、彼女の記憶から、段々とその影が薄れていっているのを、意外なかたちで知ることとなってしまった。

父親が存在していた証明として、彼の子である娘がそこに存在しているのだから、思い出というあやふやな物よりも、確かな『実体』である彼女が今ここに存在していることが重要なのだとは思う…

しかし…あんなに溺愛していた「僕のかわい子ちゃん!」に、薄ぼんやりとしか思い出してもらえない『パパ』は、今頃ひとり、彼岸で涙しているかもなぁ~ ┐(´-`)┌と、ちょっと寂しくなったりするのでありました。

⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーーーン

第49話『あべこべ』の出だしのページ、台所の横のテーブルの上に、知る人ぞ知る『お父さんスイッチ』が置いてあります。か、感動…。 やっぱり、あずまきよひこ氏は素晴らしい。

よつばと! 8 (8) (電撃コミックス) Book よつばと! 8 (8) (電撃コミックス)

著者:あずま きよひこ
販売元:アスキー・メディアワークス
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人間のかたち

Man08 『人間のかたち』

65.0×102cm 1996年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

お腹の中に 「何か知れないものがある」 と言われてから、その正体を突き止めるために市内の大学病院へ、週に一度のペースで検査に出かけるのが習慣となってしまった。

たいした検査ではないものの、検査を受ける際には認印をした『承諾書』なるものを提出しなくてはならない。

承諾書には様々な項目が書き連ねてあるのだが、簡単に言えば、検査に際しての『してはいけないこと』・『しても構わないこと』・『不測の事態が起きた場合の責任の所在』などの説明が羅列してあるのである。

『してはいけないこと』というのは、よくある検査前の注意事項で、絶食・飲酒・運転・服薬などについてだ。

『しても構わないこと』というのは、飲食や運動を含めた、生活習慣についてのことが書いてある。

結局、押印しなくては検査は受けられないわけで、仕方が無いのでざっと目を通し署名捺印をするしかないのだが、今回はその中に、思わず目を止め、時代の流れを感じずにはいられない項目を見つけ、ひとりで苦笑してしまった。

・『この検査では、セカンドオピニオンを受けることが出来ます』

…少し前までは、患者が他の病院もしくは医師に意見を求めることを極端に嫌う病院や医師が多かったのになぁ~、社会の風潮を反映しているもんだなぁ~、と感心してしまった(苦笑)

(もちろん、今でも 「よその病院にはカルテを出さない」 とか、医師が激高して 「そんなに信用しないなら、当院ではもう診察できません」 などと、冷たく言い放つ医師も多いようだけれど…。)

さて、原因がわかれば、後はどう対処していくか、である。

対処の方法は様々。そして…その最終的決断は全て患者側に任されるのである。

病院にとって重要なのは、医学に対する医師の信念や情熱などではなく、いざという時のための責任の所在を明確にしておくことのようだ。

患者側も、情報を集め勉強をしなくては、病院とうまくは付き合っていけないのだと、改めて感じた通院だった(…てか、未だ通院中ですが ┐(´д`)┌ヤレヤレ…)

 寝ずの番 寝ずの番  中島らも
販売元:セブンアンドワイ
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人間のかたち

Man07 『人間のかたち』

102×65.0cm 1996年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

たった一つの肉体の中に、沢山の『私』がいる。

何気無く、その一つ一つの『私』を、思いつく限り頭の中で羅列してみる。

・子供らと過ごすときの母親の『私』

・学校や地域で活動するときの保護者としての『私』

・会社で仕事をするときの、社会の中の大人の『私』

・友人と他愛無いおしゃべりをする、ちょっと油断している『私』

・仏壇に合掌し、二度と戻れない過去に囚われている『私』

・誰とも接しない静かな時間に、心の整理をしたり空想を楽しむ丸裸の『私』

・月に一度、受診先の病院で対話するときの、医師と自分に対してすっかり冷めてしまっている『私』

次から次に、色々な『私』が浮かんできて、羅列するときりがない。

接する相手や状況によって、無意識に自分の中の沢山の引き出しを開けて、その場にふさわしい『私』を自動的に選択し他人と接しているのだなと、改めて知る。

どれも全部『私』なのに、どれが本当の『私』なのか分らなくなる。

そんな時、ふと頭の中に作家・中山可穂氏が浮かんでは消える。

彼女は、丸裸の自分を外に向かって見せるのに、どれだけの勇気と時間を要したのだろうか。

初めは単なる『吐露』だとしか思えなかった彼女の作品は、脱皮を繰り返しながら、徐々に『自信に満ちた一人の人間としての私』の作品に変わり始めている。

どの時点でも、中山可穂氏は彼女自身であって、他の誰でもないのは自明の理ではあるが、この先、彼女の作品がどんな変化を遂げていくのか、とても楽しみだ。

あせらず、ゆっくりと新刊を待ち続けたい。

 サイゴン・タンゴ・カフェ サイゴン・タンゴ・カフェ  中山可穂
販売元:セブンアンドワイ
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人間のかたち

Man10 「人間のかたち」

102×65.0cm 1996年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

出勤のため、バス停に立つ。

朝から照りつける太陽に背中を焼かれ、汗が胸元を流れ落ち、大変気持ちが悪い。

ワシワシワシ…と、狂ったように反響し続けるセミの鳴き声になす術もなく、腕時計とセミを交互に睨みつけながらバスを待つ。

一日中ビルの一室に閉じこもって仕事を終えた後、退社のために、朝とは逆方向のバス停に立つ。突然、轟音と共に傘を突き破らんばかりの大粒の雨に見舞われ、濡れ鼠になり帰宅

こんな酷い一日が、八月の初めからずっと続いている。異常気象とか観測史上初の記録とか、そんな言葉に、もう飽き飽きしつつある。

『地球のかたち』が変われば、当然、そこで暮らす『人間のかたち』も変わっていくだろう。

これ以上、酷い状態になりませんように…などと思いながら、娘の夏休みの宿題『エコ日記』なるものを横目で見ながら、苦笑い。

『今日、地球のために頑張ったこと』…そんなものを書き出している彼女であるが、空調の効いた家の中で、一日中テレビゲームやパソコンなどで遊びながら過ごしている、典型的な現代っ子のひとりである。

この形ばかりの嘘っぱちのエコ活動も、子供にとっては大切な提出物のようである。

夏休みもあと僅か。

多くの子供らが、父親や母親と共に『にわかエコ活動家』や『にわか科学者』に変身する時期が、今年もまたやってきた。大人も子供も大忙しのことだろう。

 どーでもいいけど どーでもいいけど
販売元:セブンアンドワイ
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Triceratops-恐竜

Mon09 Triceratops

F150 1987年制作

Mixed Mediums on Plaster Panel

夏バテ進行中。

お腹に何か知れないものがあると医者に言われ、病院であちらこちらといじりまわされる事になった。

「子供を残しては死ねないぞ。あと10年は生き残るぞ」

誰に対しても何の責任もなく、もっと孤独であったなら、どんなに楽だろうかと、ふと思う。

ああ、夏バテ、ますます進行中…。

六十三年前の八月六日。広島に原子爆弾が投下された。

遠くで起こる出来事は、身近な死とは直結しない。

原爆を落とすという行為は、遠くの遠くの海の向こうの出来事で、非現実のゲームの世界に近いのかもしれないな、そんなことを思いながら、どろりと溶けていく『Triceratops』をじっと眺める。

逝ってしまった人と、残された人。

迎え火をたいて、食物を供え、自宅に祖先や死者を迎えて祭る準備に入る。

いつの間にか、盂蘭盆会が目の前になっていた。

夕凪の街桜の国 Book 夕凪の街桜の国

著者:こうの 史代
販売元:双葉社
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どすこい大相撲 一番勝負

Sumoubond04 『どすこい大相撲 一番勝負』

79.0×64.5cm 1989年制作

九州日東精工株式会社コレクション

大相撲 名古屋場所。13日目にして優勝を決めた白鵬。

6場所の中で、唯一、優勝していなかった名古屋場所。

「必ず、この場所で…!」 

横綱白鵬の内に秘めた闘志は、相当なものであったに違いない。

『此処一番の強さ』を実現するのは、並大抵のことではない。

地道な努力の継続による準備と、規律ある行動によって、目標を一つずつクリアし、レベルアップを計るには、かなりの意志が必要だろう。

芸術は、センスと才能で、簡単に成し遂げられるように思われがちだが(実際にそういう画家もいるのだが) 彼らも実際には、数えきれないほどのデッサンによって目と技術を磨かねばならないし、日本画や彫刻や版画であれば、習得しなければならない知識や技術が沢山あるのである。

それらが下地にあって、そこから先が、センスと才能…そして『運』を招きよせる意志の出番なのである。

さて、天才少年と呼ばれ、学校に何の意義も見出せず不登校だった中学生の主人公の少年が、人間界にやってきた魔物と一緒に、様々な困難に立ち向かいながら、強い絆で結ばれた最強のパートナーへと成長していく姿を描いた少年漫画『金色のガッシュ!!』が、とうとう最終巻となってしまいました。

少年誌連載漫画にありがちな、編集者側と作者との作品への思い入れと方向性の違いによるトラブルから、後半、作品が雑になり、内容も戦闘シーン重視型へと変わってしまい、少しばかりガッカリしかけたけれど、全巻を通して読み終えると、やはりなかなか良く描けていたのではないかと思います。

漫画漬けの子供らは、小遣いを漫画につぎ込むのだけれど…この漫画だけは、全巻を母が揃えてしまったのでありました…。

「君らは若い!地道な努力の継続による準備と、規律ある行動によって、目標を一つずつクリアし、レベルアップを計ることのできる意志を養うのだー!」

…という、うるさい小言つきで、ですがね(反省)

金色のガッシュ!! 33 (33) (少年サンデーコミックス)

著者:雷句 誠

金色のガッシュ!! 33 (33) (少年サンデーコミックス)

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Mother and Child

Etching01 『Mother and Child』

Color Etching 1983年制作

「初めは一匹のつもりやったんだぞ」

と、父が言った。

ある日、実家へ帰省すると、小さな仔猫が一匹、父の寝室に住み着いていた。

あれから数年。猫は毎年増えていき、現在では、世間で言うところの『猫屋敷』へと変わりつつある、片田舎の実家である。

職場の駐車場で、職員の昼食の残飯を何度か与えているうちに、父の姿を駐車場付近で見つけては、「にゃぁーん」と擦り寄ってくるようになった仔猫。

まだ暖かいうちは何も感じなかったが、段々と冬が近付き気温が下がってくると、父は仔猫のねぐらの心配をするようになってきた。

そこで、不安を抱えて仔猫を想うより、自宅に連れ帰ったほうが、自分自身の精神的な負担が少ないと、父は判断したようだ。

動物病院で処置を受け、人間の住処へ連れて行かれた仔猫は、やはり野良猫。なかなか人には懐かず、現在も父以外の人間には心を許してはいない。

これも父性愛というのだろうか。

猫にとって、これは幸なのか不幸なのか…。

少女時代に、一人芝居ができるほどに読み込んだ、大島弓子著の『綿の国星』の擬人化された猫たちの世界は、心を暖かい毛布で包んでくれた。

その大島弓子さんも、随分と色んな経験をされ、今ではりっぱな『猫屋敷』の主となっていらっしゃるようだ。

大島弓子さんの猫たちとの暮らしを描いたエッセイ漫画が『手塚治虫文化賞短編賞』を受賞し、映画化されて今秋全国一斉公開とのことである。

母性愛。父性愛。人間のエゴイズム。猫のあるべき姿。野良猫と家猫…

今秋は、色々と考え事がつきずに過ごせそうかな。

グーグーだって猫である

著者:大島 弓子

グーグーだって猫である

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心景

Geidai 『心 景』

13.6×200.0㎝(三部作) 1979年制作

東京藝術大学卒業制作

Egg Tempera,Acrylic on Canvas

卒業間近、卒業制作の出来栄えがどうしても気に入らず、結局、作品を提出しなかったため、当然のごとく留年決定となってしまった今泉。

翌年、何とか『心景』を描き上げ、無事に卒業。心機一転、新たな絵画の世界を求めて、ニューヨークへと旅立ったという、曰く付の卒業制作『心景』である。

さて、今泉が急逝してからというもの、何故か『新宗教』関係の方々が、我が家へ頻繁に電話や訪問をしてくれるようになった。

無下にすることも出来ず、とりあえず、一通りお話を伺ったりする。どの人からも皆同じようなオーラが出ていて、そのオーラから

「あなたを苦しみから救ってあげたい」 

という深い慈愛が、辺り一面に漂っている。

そして皆、自分の『新宗教』を心から信じているので、どの宗教の人も「世界にこれ以上素晴らしいものはない!」という、絶対的な自信を持って熱弁をふるう。

さて、情報というものは、多方面から得なくてはならないと、私は常日頃から思っている人間だ(…単に、大変疑り深い、あるいは捻くれ者(笑)というだけのことだが)

『新宗教』についても、信仰している本人たちではなく、何処にも属さない、しかし冷静にそれらについて(個人的な感情抜きで)概観することの出来る人とも話してみなくては…と、考えていた。

そこへ友人が大変面白い本を見つけてきてくれた。日本の10大新宗教について、客観的に述べてあり、実に分り易く、我が家へ訪れる人たちの心の支えとなっている『新宗教』の発祥から現在に至るまでと、その展望について、ある程度正確に知ることが出来た。

だからと言って、何かが変わったわけでも、変わるわけでもない。『新宗教』を信じる多くの人たちの『心景』を見たような気がするだけだ。

十人十色、それぞれの心の中にある情景は、彼ら自身のものであって誰のものでもない。何を信じようと、個人の自由なのだ。

1979年の今泉の心の情景は、極楽なのだろうか地獄なのだろうか。不思議な重さを持った作品だ。

今の私の心の情景を描くと、一体どんな色になるだろう…

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Kissing

Face02 『Kissing』

24×20"(inches) 1983年制作

Color Etching

息子、13歳。中学一年生。

さて、いよいよ『難しいお年頃』に突入である。

台所でネギをトントン、小鍋をグツグツさせていたら、息子がにゅっと背後に現れた。

手には一枚のプリントを持っている。そのプリントを私に手渡し、まるで夕飯のメニューを尋ねるかのように、サラリと言った。

「ねえ、ママは40年近く生きてきて、この問題が生活の中で必要なことが一度でもいいからあった?」

プリントは数学の問題集の一枚であった。

『次の式の値を求めよ。(1)log26+log212-2log23』 と、チンプンカンプンな設問が書いてある。

「…ううん、一度も」 と答えながら、ログってなんだったけかな?対数か?などと、心の中で冷や汗を流す。

「やっぱりねー」 息子はそれだけ言うと、スーッといなくなってしまった。

え!?それで終わりなの?

「こんなもの勉強しても人生の役に立たないじゃないか!」とか、

「何故こんな必要のない面倒くさいものを勉強しなくちゃならないんだ!」とか、

「今の僕にはもっと必要なものがあるに違いない!」とか…

人生の壮大な哲学の小路の入り口で、地団太踏んだりしなくていいの?

13歳の迷路に入り込んだら 「さあ、母の腕の見せどころよ!」とばかりに張り切っていたので、何だか拍子抜けをしてしまった。

『母の見せ場』を奪われて、大変つまらなかったので、自分から息子に擦り寄っていくことにした。

「数学って、大変だと思うけどさぁ…云々」 と言いかけると、

息子は顔も上げずに問題を解きながら 「数学は楽しいから、別に大変じゃないよ」と一言。

ちぇっ、つまんないでやんの…と思いながら台所に引き返していると、背後から満面に笑みを浮かべながら、息子が話しかけてきた。

「ママは対数の計算が要らない世界で暮らしてきたんやねー。僕は、まだ何になるか決めてないから、一応なんでもやっとくつもり。だって、まだこれから色んな道が選べるもんねー

…という訳で、子供に止めを刺されて、人生について思い悩むのは母の方になってしまった。

過ぎ去った40年近くの人生で、沢山の分かれ道に出会ってきた。その都度、選択をして前進してきた(ときには後退もしてきたけれど…)。その別れ道のどれかに『対数の計算が必要な世界』ってのも、あったのかな…。

若いって、いいな。

息子は、まだまだ『名無し』だ。彼は人生の分岐点で、自分にどんな名前を付けていくのだろう。

僕にはわからない (双葉文庫) Book 僕にはわからない (双葉文庫)

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Kissing among Faces

Face01 『Kissing among Faces』

90.9×65.1cm 1982

Egg Tempera,Acrylic on Canvas

時々、近隣の中学校の『裏サイト』へ遊びに出かける。

無数の『名無し』が、ウヨウヨいて、実体のわからないそれらが、奇妙なやり取りを続けている、何とも不思議なところだ。

『名無し』たちは『単語』で会話する、非常に変わった生き物だ。

名無し:まじ?

名無し:ん

名無し:きも~

名無し:テスト、いらね

名無し:サイテー

ちっとも面白くないので、もちっと語彙を増やせよ『名無し』!…などと思いつつ、今泉の初期の遺作が頭にポヨヨンと浮かんできたので、古い資料の埃を叩きながら、暗闇を彷徨う無数の顔の作品『Kissing among Faces』を探し出した。

そこに確かにいるのに、実体がわからない無数の『名無し』たち。

あまりの不気味さに、途中で投げ出したきりの夢野久作の『猟奇歌』と、実体のない『名無し』たちと、ホントはどちらが怖いのだろう…

「ある名をば ていねいに書き 抹殺をして 焼きすてる心」

「頭の中で ピチンと何か割れた音 イヒ・・・・・・・と・・・・俺が笑ふ声」

「号外の真犯人は俺だぞ・・・・・・と 人ごみの中で 怒鳴ってみたい」

「誰か一人殺してみたいと思ふ時 君ひとりかい・・・・・・と友達がくる」

「自殺しようか どうしようかと思いつつ タッタ一人で玉を撞いてゐる」

「毎日毎日 向家の屋根のペンペン草を 見ていた男が狂人だった」

(『猟奇歌』は全集の<3>に収録されている。読んで気持ちの良いものではないので、おススメは<4>)

夢野久作全集〈4〉 (ちくま文庫)

著者:夢野 久作

夢野久作全集〈4〉 (ちくま文庫)

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Elephant Accident ―陽炎―

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『Elephant Accident ―陽炎―』

F150 アクリル

『多夢』との対決について。

疲労が蓄積されてくると、異常な頻度で、一晩に何本ものドラマを見るように夢を見るようになる。

もちろん睡眠が浅く、熟睡など出来ない。そんな『多夢』の状態が長く続けば、当然、身体が悲鳴をあげ始める。

さて、困った。処方される薬の種類が増えるばかりで、一向に解決しないのだ。

服薬に頼らなければ安眠することも出来ないのかと、自分自身に腹が立ち始める。すると今度は、腹ばかり立てている夢を見るようになってくる。

ある日、担当の医師が言った。

「夢日記を書かれてみてはどうでしょう?」

その日見た夢を、起き抜けに(夢を忘れてしまわない内に)書きとめてみてはどうかというのだ。

「夢を書きとめる事で、夢に肉付けがされ、本人にも分らない夢の(例え一貫性がみられなくても)ストーリーが出来上がり、ストーリーが出来てしまえば、夢は小説を読み終えるように完結することが出来るといわれています」

医師の言葉に、それではちょっと試してみるかと、朝っぱらから、起きると同時に枕元のノートにせっせと夢を記録してみることにした。

『夢』を『言葉』に変換する作業を始めてから約10日ほど経過した頃、突如、夢が完結してしまった。

徐々に夢の回数が減り、睡眠時間が長くなり、ついには全く夢を見ないままに目覚めるようになったのだ。

今でも時々、当時の『夢日記』を読み返したりするのだが、なかなかどうして、怪奇小説家にでもなろうかしらん…という、摩訶不思議なストーリーのものがあったりする。

人間の脳は、なんとも不思議なものだなぁ~と、改めて実感しつつ『多夢』との対決を終えたのでした。

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Book フロイト1/2 (白泉社文庫)

著者:川原 泉
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Elephant Accident 03

Keinanbi 『Elephant Accident 03 EA03-182-Draw』

162×130㎝ 2003年制作

慶南道立美術館コレクション(韓国)

夢を見た。

もう死んでしまった人の、夢を見た。

とても単純な、日常の延長のような、たわいない夢だ。

ごく普通の夕方に、ごく普通に「ただいま」と言いながら、死んだはずの人が、玄関のドアを開けて帰ってくる。

こちらも「お帰りなさい」と答えて、玄関まで迎えに出る。

子供たちが、子犬のように、帰宅した父親にじゃれついている。

帰宅した人も、出迎えた人も、皆がごく普通に幸せで、何事もなかったように、食卓には夕餉の支度がととのっている。

…そして、夢は覚めるのだ。

こういう類の夢が、一番困ってしまう。

なぜなら、ベットの上で、一体今がいつなのか、ここが何処なのか、自分の本当の生活は「あちら側」なのか「こちら側」なのかが、分らなくなってしまうからだ。

脳が完全に目覚めて活動を開始するまで、自分のいるべき場所が分らずに、暫くは身動きが取れない。

両手を握っては閉じ、握っては閉じ、両眼で天井を睨んでは閉じ、睨んでは閉じ…。動作を少しずつ増やしながら「こちら側」が現実であることを確認する。

現実を確認することは、死んでしまった人は、もう二度と、玄関の扉を開けて「こちら側」に帰ってくることはないのだと、改めて思い知らされることでもある。

こういうのが、一番困る、一番苦手な夢だ。

萩尾望都さんの『あぶな坂HOTEL』は、あの世とこの世の間に建つホテルだ。

時々、夢の中で帰ってきては、私を大変困らせるあの人も、ここの住人なのかもしれない。

あぶな坂HOTEL (クイーンズコミックス) Book あぶな坂HOTEL (クイーンズコミックス)

著者:萩尾 望都
販売元:集英社
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人間のぬけがら

Maninstallation 『人間のぬけがら』

400×450×500㎝

Installation 1997年制作

子供の骨が、ポキンと折れた。

右手の指の骨が2本、ポキンと折れて捻じれた。

医者が折れた骨を、またまた捻って元の場所に正しく戻してくれた。

後はギプスの中で、骨が徐々にくっついて再生していくのを、静かに静かに待つのみである。

皮膚があって、脂肪があって、筋肉があって、骨があって、それらによって臓器が守られて…。全部揃って、人間として元気に活動できるということを、ついつい忘れてしまう。

目には見えない『心』が抜けてしまった『人間のぬけがら』は、人間を造っている要素が溶けて流れて、得体の知れないものとなり、美術館の空間に異様な雰囲気を漂わせていた。11年前のことである。

生物は、自己に備わる免疫力を使って、皮膚なり骨なり臓器なり、ある程度のものなら自然治癒させる能力を持っている。

ホメオパシー、暗示療法、催眠術、カイロプラクティックetc.etc.

自己の免疫力を高め『病気を治す』という最終目的に向かって頑張る人々は沢山いる。

何を信じるかは、個人の自由だ。だから、その療法が医学的に説明がつき、医学会で認められているのか云々については、また別の問題であるといえるのかもしれない。

唯一つ…確実にいえることは、完全に破壊されてしまった臓器は、サイボーグにでもならない限り、絶対に元には戻らないということだ。

これだけは忘れずに、皆さんお身体大切に。

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)

著者:中島 らも

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)

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TUOJIANGOSAURUS―恐竜

Bond01 「TUOJIANGOSAURUSートゥオジャンゴサウルス」

73×61㎝ 1987年制作 

太陽築炉株式会社コレクション

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

トゥオジャンゴザウルス

名前の意味は、中国の川『トゥオジャン』のトカゲ。

背中に、とげ状の骨盤が2列に並んでいるのが特徴の、ジュラ紀後期の植物食恐竜。

今泉憲治お得意のデフォルメ作品。

背中のとげが、作家の想像の翼にのって、花火のように鮮やかに天に向かって拡がっている。

ちびっ子恐竜博士や研究者には、お叱りを受けそうなトゥオジャンゴザウルス』。

これは確かに間違った恐竜の姿であるかもしれない。

が、しかし…そのことを充分に知りながらも、想像の翼を拡げることの楽しさを失わない、そんな大人であってほしいと思う。

80歳を過ぎてもなお、想像の翼で心の天空を飛び続ける作家、野見山暁治先生の展覧会。

ダイレクトメールの「子供たち、元気ですか」の万年筆の文字に、思わず「ええ、元気です」と答えてしまっていた。

Nomiyama_2 早良美術館 るうゑ 15周年記念

野見山暁治』展

2008/4/30~5/18  11:00am~5:00pm 入場料200円

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STEGOSAURUSⅡ―恐竜

Bond03 「STEGOSAURUSⅡ」

73×61㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

闘うステゴザウルス。

卵や子供を守るときの威嚇の表情、かなり強面。

世間は『母の日』で、いたるところで、プレゼントやらカーネーションやらを抱えた人々と擦れ違う。

お母さんは、大変なのだ。感謝を一日で済まされるほど、楽ではないのだよ。

君らの気まぐれと好奇心のお陰で、育ててその死を看取った生き物の数知れず…

可愛いアマガエルの『ぴょんた』くんの為に、ミルワームを死ぬ気で手に乗せ餌付けに成功。

全身鳥肌で向き合った、ヤゴやアゲハチョウの幼虫やカブトムシの幼虫の羽化。

全長10cmにもなろうかというカマキリの『かまたん』の為に、日々、庭の雑草の中をかき分け捕まえた精霊バッタは一体何匹いたことか…。(足の硬いところだけを残して、バッタをバリバリ完食する『かまたん』に絶叫しながらも、何故か目が離せず、じーっと観察)

あのね、お母さんは、本当に大変なのだよ。

そして、当然、お父さんも大変なのだ。

もう、いなくなってしまった大好きな作家、中島らも氏が書いた、大変珍しい子供向けの本『お父さんのバックドロップ』

子供より子供っぽいヘンテコな四人のお父さんの姿に、ちょっとだけ胸が熱くなりました。

大人は一日にして成らず。

お父さんもお母さんも、そりゃもう大変だったわけよ…

ということで、来月は、1910年に始まった、アメリカのJ=B=ドット婦人提唱の『父の日』だ。子供たちも大変ね(笑)

お父さんのバックドロップ (集英社文庫) Book お父さんのバックドロップ (集英社文庫)

著者:中島 らも
販売元:集英社
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STEGOSAURUS―恐竜

Mon06 「STEGOSAURUS」

61×73㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

世の中には使いみちのないものが沢山あって、それらは長い年月の間に自然淘汰されていく。

中生代ジュラ紀に栄えた剣竜の一種 『ステゴサウルス』

約二億一千二百万年前から一億四千三百万年前までの、およそ六千九百万年間を生き続けたステゴサウルスも、使いみちのないものとしてこの世界から消えてしまった。

都市高速を走るバスの窓から、黄砂と廃棄ガスで霞んで見える海の彼方を眺め、使いみちのないものをあれこれ考え、自分の名前を挙げてみる。

「ああ、これは名答。私って、本当に使いみちのない人間だものなぁ。」

そんなことを考えた日は、全く使いみちのない、くだらない本を読む。

村上春樹氏と稲越功一氏の名前が印刷していなかったら、誰も手には取らなかっただろうなと思われる、出版社の『使いみちのない本で懐を肥やす商法』に負けて、『使いみちのない風景』を購入。

ぱらぱらページをめくって「ホントに使いみちないなー」と独り言ちながら、いつのまにか安眠。

使いみちのないはずのものが、意外に、使いみちのないものとしての実力を発揮していたりするのでありました。

使いみちのない風景 (中公文庫) Book 使いみちのない風景 (中公文庫)

著者:稲越 功一,村上 春樹
販売元:中央公論社
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COMPSOGNATHUS―恐竜

Mon03 「COMPSOGNATHUS」

61×73㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

ジュラ紀から白亜紀に生きていた恐竜『COMPSOGNATHUS(コンプソグナトゥス)』

名前の意味は『かわいらしいあご』

作品と名前の意味を照らし合わせて、思わず「うふふ」

最も小さい肉食恐竜の一つで、全長約1メートル程といわれているので、なかなかホントに『かわいらしいあご』の持ち主だったのかもしれない。

恐竜が残した化石から、彼らの姿や生活や習性の謎を解き明かしていく研究者たち。

その研究者によって復元された恐竜の姿から、想像の翼を最大限に拡げて作画していく芸術家。

どちらも、自身の目で見ることの出来ないものを追い、そこから何かを生みだしていくというのだから、本人たち(研究者や芸術家)にとって、これほど楽しいことはないのではないだろうかと、羨ましい気持ちになる。

しかし、実際に昨日一日を生きて、今日をまた数時間ほど生きて…明日へとこの時間が続くことを思えば、その都度ぶつかる出来事や出会う人々を、大切にしていかなくちゃもったいないなぁ…

そんなことを思いながら、友人が届けてくれた『きょうの猫村さん』最新刊のページを、ゆっくりめくって、のんびり過ごす。

猫村さんは、今日もひとコマひとコマを、大切に大切に生きていました(満足)

きょうの猫村さん 3 Book きょうの猫村さん 3

著者:ほし よりこ
販売元:マガジンハウス
発売日:2008/03/21
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IGUANODON―恐竜

Mon02 「IGUANODON」

61×73㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

随分と歳をとりました。

恐竜のいた時代があったことを想えば、私の生きている時間など、蜉蝣のごとく儚いので、これくらいの老化は取るに足りないことなのでしょう

老化に伴う身体的な衰えは当然ですが、心も並行して衰え、徐々に『鈍化』していくのを実感ます。

これを残念なことだと、多少ガッカリしたりもしますが、意外にこれが重要だったりもするのだ、とも思います。

心の『鈍化』によって、伸びていく若い力に対して『寛容の精神』が芽生え、近付いてくる死に対して『悠然と構える』ことができるようになるからです。

さて、最後の最後まで、熱く燃える鉄の玉のごとき人生を突っ走った、『吉本興業』の基礎をつくった女社長・吉本せいさん。

金欲と権力への執着から、成功だけを夢見て、着実に自分の目標に近付きながら突っ走った彼女。

最後は病に倒れ、大金を叩いて当時の最高の治療を受けたといわれますが、命はやはりお金では買えなかったようです。

時々、このくらいのバイタリティーでもって、残りの人生を瞬時に駆け抜けてみたいなどと思わないこともないけれど、やっぱり、心の『鈍化』を楽しむほうがいいな…。

(『女興行師 吉本せい』は、山崎豊子著『花のれん』と合わせて読むのがベスト。『花のれん』は、吉本せいさんの生涯を、実話を脚色しながらドラマティックに描いた小説。山崎豊子の実力は誰しもが知るところです)

女興行師 吉本せい―浪花演芸史譚 (ちくま文庫) Book 女興行師 吉本せい―浪花演芸史譚 (ちくま文庫)

著者:矢野 誠一
販売元:筑摩書房
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花のれん 花のれん

著者:山崎 豊子
販売元:新潮社
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PTERANODON―恐竜

Mon04 「PTERANODON」

61×73㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

花散らしの雨が、通り沿いの歩道を、あっという間に桜色の絨毯に変えてしまった。

『一番美しいとき』を捉まえるのは、なかなか難しい。

恐竜シリーズは、今泉が芸術家としての自信に満ち溢れていた時期の作品で、この頃が彼にとって『いばん美しいとき』だったのかもしれない。

さて、人間が放つ匂いの『一番美しいとき』を、一生涯閉じ込めて、自分の手元に置いておきたいという欲望に駆られた青年グルヌイユ。

『香水ーある人殺しの物語』の主人公であるこの青年は、少女たちの匂いを収集するために連続殺人を犯し、その匂いを独自の方法で閉じ込めていきます。

『パフューム』という題名で、映画が話題になったけれど、原作も全世界1500万部という大ベストセラーとなりました。

映画のように、ヒロインを追い詰めるといったようなサスペンス仕立ての場面はなく、匂いを採取するための対象物を殺すときには、ただ後頭部を一撃するという簡単な描写のみ。

世界観が全て匂いによって支配されている、一人の人間の生い立ちと精神世界を描いた物語で、当時のフランスの時代背景や、香水調合に関する知識がある程度あれば、映画とは違った楽しみかたのできる文学作品ではないかと思います。

匂いにしか感情を抱けず、それによって生かされてきた主人公が、自分が愛した匂いのごとく最後には跡形もなく消えてなくなる…という結末が、皮肉たっぷりで面白かった。

Book 香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

著者:パトリック ジュースキント
販売元:文藝春秋
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STYRACOSAURUS―恐竜

Styracosaurus 「STYRACOSAURUS」

61×73㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

自分が踏みしめる大地の下に、かつて恐竜が生存していた時代があることなど、とても想像が及ばない。

自分が見上げる青い空の向こうに、果てしない宇宙空間が広がっていることが、信じられない。

自分の生きている時間が、地球のほんの一呼吸にしか当たらないのだと思うと、ちょっとゆったり構えて生きてみようかなと、そんな気持ちになる。

年齢を重ね、未来という言葉と無縁になりつつある私の側で、子供が無心で本を読んでいる。

スティーブン・ホーキング&ルーシー・ホーキング父娘、著の『宇宙への秘密の鍵』だ。

あまりに熱心に本に入り込んでいるので、横から少しページに目を走らせてみる。文章が簡潔で、とても読みやすく、テンポ良く物語りが展開していく。子供をひきつけるのに充分な要素が揃っているな、と感心しながら、子供の様子に納得。

さて、本を読み終わった子供は、目を輝かせながら本の内容について語り、未来の夢について饒舌だ。

子供のエネルギーを羨ましく思い、ホーキング博士の偉大さを改めて実感するひと時だった。

(子供たちの教育のために日々奮闘を続けるNさん。忙しい合間を縫って、この本を子供のために届けてくださった、人として母として、大変尊敬している彼女に、心より感謝です)

宇宙への秘密の鍵 Book 宇宙への秘密の鍵

著者:ルーシー・ホーキング,スティーヴン・ホーキング,さくま ゆみこ,佐藤 勝彦
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素描―ペンギン

Sobyopengin03 「ペンギン」

The ZOOシリーズのための素描

こちらの乱視が進行したのか、ペンギンが分身の術を使ったのか。

「これは確かに一体のペンギンである」という、視覚から得られる安心感がないと、なんだか見ていて落ち着かない。

鳥は、翼を広げ大空を羽ばたくもの、という固定した考え。

人間は、二足歩行で大地を踏みしめるもの、という固定した考え。

なんらかの定義は、他人にそのモノについての説明を求められた時、とても役に立つものだなと思う。

そのお陰で、自分自身の存在についても、ちょっとした安心感をもっていられるような気がしたりもする。

(この安心感というものについて、上手く説明するのはひどく難しいのだけれど、例えば「人間」も「動物」であるのだが、「理性的」という種差を挙げることによって、「人間は理性を持った動物である」という定義ができ、自分が所属することを許される、他の動物とは違う社会があるのだということを知ることができ、それによって、ほんの少しばかり安堵するということを言いたいわけです…)

自分の居場所、自分が所属すべき社会…それらを模索し、苦悩する時代というのは、誰にでもあるのではないかと思う。

三島由紀夫は『鏡子の家』のなかで、四人の青年たちの生の軌跡を、朝鮮戦争後の荒廃した時代相の中に浮き彫りにしている。

重里徹也著『文学館への旅』の中に取り挙げられていたので、興味を惹かれて読んだ本。(筆致に慣れるまでに時間が掛かり、前半は脳トレのようで…後半は一気読み、という本でした)

(うーん、しかし…。『人鳥』と呼ばれるペンギンさん。このネーミング、とっても迷惑なんではなかろうか…)

Book 鏡子の家 (新潮文庫)

著者:三島 由紀夫
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Elephant Accident ―おふく―

Eleouku 「Elephant Accident ―おふく―」

個人蔵 2003年制作

福岡市動物園 おふく

―  命日 ―

今泉憲治の急逝から三年。

彼と彼の残した作品たちの時間だけが、あの日のまま静止している。

生きて呼吸するものは、時間の波を乗り越えながら、少しずつ形を変えていく。

今日の私は、明日の私ではない。

目には見えないけれど、小さな小さな変化を遂げる。

少しずつ少しずつ、今泉の生きた時間に近付いていく。

そうして、いつか、今泉の生きた時間を越えたとき、そこには何が見えるのだろう。

― 合掌 ―

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camel-ラクダ

Zoocamel 「camel-ラクダ」

79.0×64.5㎝ 1986年制作

Bond Work ボンド・ワーク

マスクとメガネで防備を固め、黄砂の中を目的地に向かって前進。

黄砂の向こうには春があるのだと、自分を励ましながら、喘ぐように前進。

春色のラクダを眺めながら、諦めずに前進。

いくつになっても、苦手な季節は変わらないまま。

ラクダみたいに、鼻の穴が自由に開閉できると、ラクなんだけどなぁ。

フタコブラクダ

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smiley bear-クマ

Zoobear 「smiley bear-クマ」

79.0×64.5㎝ 1986年制作

Bond Work ボンド・ワーク

クマの穴篭りもそろそろ終わり。

常に、何かを欲する「ヒト」は、季節など関係無しに、一年中活動を継続。

一つ手に入れると、またその次が欲しくなり…

お金に権力に快楽に…。

人間の欲望には際限がなく…どろどろどろ~

…という「人間像」を描いたらピカイチの桐野夏生さん

読後感がこんなに胸糞悪い作家は、なかなか居ないかも…

桐野氏の中には、一体いくつの人格が棲んでいるのだろうと想像したりして、独りで勝手に恐怖する、春の始まりなのでした。

ニホンツキノワグマ

(自然の境界線が壊れ始め、人間との共存がOUT!になりつつあるクマさんです)

OUT 上  講談社文庫 き 32-3 Book OUT 上 講談社文庫 き 32-3

著者:桐野 夏生
販売元:講談社
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gorilla―ゴリラ

Zoogolila1 「gorilla-ゴリラ」

79.0×64.5㎝ 1986年制作

Bond Work ボンド・ワーク

「絶滅の危機に瀕する」

この言葉を何度みたことだろうか、と思う。

学名:Homo sapiens sapiens (ホモ・サピエンス・サピエンス)、和名:ヒトも

いつか「絶滅の危機に瀕する」なんて書かれるんだろうか。

あ、でも書くのは「ヒト」なわけであるから…自分たちで自分たちのことを危惧するわけか。

それとも、未知の宇宙生命体みたいなモノが現れて、ヒトの絶滅を危惧するんであろうか。

ニシローランドゴリラ

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tiger―トラ

Zootiger 「tiger-トラ」

79.0×64.5㎝ 1986年制作

Bond Work ボンド・ワーク

空腹だったり、閉塞された環境に置かれたりすると、

人でも動物でも不機嫌になるもんよね。

ベンガルトラ

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snake―ヘビ

Zoosnake_2 「snake-ヘビ」

64.5×79.0㎝ 1986年制作

Bond Work ボンド・ワーク

ヘビが起きなくては、春は来ない。

ヘビ舎の前で「ちっ」と舌打ち。

ヒメハブ

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puma―ピューマ

Zoopuma 「puma-ピューマ」

64.5×79.0㎝ 1986年制作

Bond Work ボンド・ワーク

春はまだ遠いようで…。

こればかりは、愚痴ったところで仕方無いので、

暫くは自宅で『動物園巡り』を楽しむかな。

まずはピューマの檻の前。残念ながら昼寝の最中。

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The Tree―木の芽時

Tree05 「The Tree―木の芽時」

F6号 2004年制作

休日の穏やかな午後。

ふと窓の外に目をやると、節分の日の豆打ちの残りを、雀がベランダで啄ばんでいるのが見えた。

嬉しくなって窓を開けると、心なしか空気がやわらかい。

部屋に差し込む陽光に、春の気配を感じながら、ちょっとだけ気持ちが温かくなった…はずだったのに。

翌日は、針のように尖った冷たい空気が、顔に身体に突き刺さり、恨みがましく空を眺める。天の気紛れに、身体が追いつかない

春が恋しい、そう思い始める頃に、今泉の遺児たちに必ず届く葉書が1通、今年もまたやってきた。

差出人は野見山暁治先生だ。

二人ともげんきそうで よかった、よかった。 

颯太クン、絵心がなくて、これも よかった。 

二代にわたって、食えないことばかり続けたら、これは大変。

樹音さん、漫画ばかり描いているうちに すぐに大人になるよ。

僕が子供のときは、漫画ばかり描いてました。

ふふふ。ほんとに、ほんとに。…と、母は家計簿とにらっめっ子しながら思います。

さあ、春はもうすぐだー。

野見山先生の万年筆のインクは、いつも温かい春の匂いがします。

うつろうかたち Book うつろうかたち

著者:野見山 暁治
販売元:平凡社
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人間のかたち97

Man04 「人間のかたち 97」

134.5×95.0cm 1997年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardboard

日常生活の中に起こる不思議な現象。

感性があまり研ぎ澄まされていないせいなのか、私は経験したことがない。

あまりにも体調不良が続くと、友人に「ねえー、頭の上にさぁ、亀か河童が乗っかっているのがみえない?」などと、冗談で聞いたりはするのだけれど…

同じ出来事を体験しても、それを超常現象と捉える人もいれば、夜毎軋む廊下の音に「最近、家にガタがきてて軋みが酷くってヤになっちゃうわー。まあね、築二十年ともなるとねー」と、日常の出来事として、それ以上深読みしない人もいる。

私は後者だけれど、でも、言葉に出来ない不思議なものって、結構心惹かれます。漫画なら『蟲師』や『結界師』や『百鬼夜行抄』ついつい夢中になってしまいます。

さて、今市子(いま・いちこ)さんの『百鬼夜行抄』。

今市子さんは大変綺麗な人物画を描かれます。その綺麗さが、何というか『リカちゃん人形』の綺麗さに似ていて…まあ、つまり、皆同じ顔に見えるので(人物の描き分けが出来ていなくて)、同じ本を少なくとも二度は読み返さねば、登場人物やストーリーを把握できないという、ちょっとした欠点があります。

でも『百鬼夜行抄』は、とても好きな漫画で、愛する友人と「今市子」さんのことを「今一子(いまいち・こ)」さんと呼びながらも、愛読している不思議漫画なのであります。

百鬼夜行抄(16) 百鬼夜行抄(16)

販売元:楽天ブックス
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イカ―cuttlefish

Fishikabondbond 「イカ―cuttlefish」

73.0×60.0㎝  1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

穏かな夏の日の午後。潮風に頬をあらわれながら、幸せの船旅を満喫中。

と、何の予兆もなしに、突然、船が傾ぎ…あっという間に『巨大イカの化け物』に海底へと引き込まれ…きゃー!!

なんてことは、三流映画の一場面でもない限りないでしょう。

が、突然降りかかる災難というのは、その辺にゴロゴロ転がっていて、いつ何処で自分の身にその災難が襲いかかってくるか、誰にもわからない。

…だからこそ『ピクトさん』は我々の生活に必要不可欠なのだ!

ここにも、そこにも、あそこにも…世界中で大活躍の『ピクトさん』たち。

日常生活に溶け込んで、密かに我々の生活を守り、身体を張って奮闘している『ピクトさん』たち。

街中を歩いていても、車を運転していても…「ピクトさんに出会えるのではないかしらん」と、恋心に似た愛しさを抱きながら、ついついキョロキョロ。

『ピクトさん』に出会って以来、、大変挙動不審な自分が、ちょっと怖くなったりするこの頃。

もしかして『ピクトさん』は、図式化された現代版『八百万の神』なんだろうか、などと思ったりしている。

ピクトさんを見かけた方は『日本ピクトさん学会』までご連絡を…(笑)

(注)公共の場などの人前で読むのは要注意!この本を読んで笑いを我慢するのは至難のわざです。笑いすぎて胃がヨジレかけた経験者より。

ピクトさんの本 Book ピクトさんの本

著者:内海 慶一
販売元:ビー・エヌ・エヌ新社
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The Tree―雨の杜

Tree06 「The Tree―雨の杜」

アクリル P30Y 2004年制

もうじき暖かい春がやってくるという頃、しとしとと冷たい雨が降り続き、今泉の亡くなった朝、雨は凍るように冷たい雪に変わった。

春霖…春の長雨と呼ばれるこの雨を、多分、生涯好きにはなれないだろう。

両腕に抱えた遺骨を納めた木箱の感触と、肌を刺す冷たい春霖のイメージは、心の中に深く焼きついて、一時もはなれることはない。

「雨の杜」に降り注ぐ雨をみていると、大地をはぐくむための喜びの雨のようでもあり、生きとし生ける者の悲しみの涙のようでもある。

この作品を仕上げた半年後に、今泉は独り静かに大地へ帰ってしまった。

音楽にしても絵画にしても、鑑賞する場合には、聴く側あるいは観る側の、それまでの人生経験が心を動かす大きな要になっていると感じることが多い。

今泉の遺児、カスキを弾く少年、12歳。憧れのピアニストは舘野泉さん。

その館野泉さんが、フィンランドにおいて「通俗的な感傷趣味」と刻印を押され、長い間埃を被って忘れ去られていた作曲家『ヘイノ・カスキ』の楽譜を校訂・解説し、日本で紹介している。

館野さんによって『激流』という邦題を得た美しいその曲を、12歳の少年は何とか弾きこなしたいと懸命に頑張っているのだが、この12年の人生を、コンクリートとアスファルトとにぎやかな街灯の中で育った彼には、『水の音』は単なる音でしかなく、それを『川や雨や雫の囁き声』などと感じることは、なかなか難しいようだ。

只今のところ『激流』は、ほとんど騒音と変わらない『濁流』となっている。

まだ12年しか生きていないのだもの。これからの経験で、そういうことが感じられるようになれたら良いね…。

夜の海辺にて〜カスキ:作品集 Music 夜の海辺にて〜カスキ:作品集

アーティスト:舘野泉
販売元:ダブリューイーエー・ジャパン
発売日:1999/03/10
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人間のかたち

Man05 「人間のかたち」

102×65.0cm 1996年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

近隣都市で、凶悪で残虐な事件が起こるなどということは、普段の生活の中であまり想像しないのではないだろうか。

福岡県久留米市の元看護婦たちによる「連続保険金殺人事件」を報道で知ったときには、出てくる地名があまりにも身近だったので、とても実際におきた事件だとは思えなかった。

『黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人―』(森 功 著)のノンフィクションを読みながら、実際に起きた事件が陰惨なものであるにも拘らず、そこに行きつくまでの過程が、あまりにも現実離れしていて、しかも滑稽ですらあることに、人間を形作る物について恐怖してしまった。

人間界を離れて山奥にひっそりと暮らす、そんな仙人にでもならない限り、人と関わらずには生きてはいけない。

自分は大丈夫?ご近所さんは大丈夫?…そんなことを考えながら生活しなくてはならないとしたら…とてもではないが精神がもたないな、と思う。『黒い看護婦』の解説で、精神科医は、主犯の女性を「サイコパス」だと書いている。

一生の中で個人が関われる人間の数はどれくらいなのかは解らないけれど、ノンフィクションにしろファンタジーにしろ、どんなジャンルの小説であっても、多くの本を読み、様々な「人間のかたち」を知っておくことは、自分や家族を守る、大切な手がかりになるのではないだろうか。

黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人 (新潮文庫 (も-33-1)) Book 黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人 (新潮文庫 (も-33-1))

著者:森 功
販売元:新潮社
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人間のかたち

Man09 「人間のかたち」

102×65.0cm 1996年制作

Mixed Mediums on Shaped Cardbord

数ヶ月に一度、強烈な頭痛に襲われる。

頭に針が刺さったまま取れないのだ。

鎮痛薬を服薬するが効果はなく、頭を持ち上げれば眩暈と吐き気に襲われ、身動きがとれなくなる。じっと横になり、頭痛が去るのを忍耐強く待つしかない。

脳外科の受診も効果はなく、器質的な問題もない。いわゆる片頭痛とよばれるものだ。

頭痛の前には必ず「予感」というものがある。偏頭痛を持病とする人間なら、症状の現れ方に多少の差はあっても、大抵はこの「予感」を体験しているだろう。そして、その痛みの辛さも同じように「ああ、あれは辛い」と、自身の痛みを重ね合わせて感じることが出来るだろう。

頭痛の間は、痛みのために熟睡することも出来ない。ただじっと横になったまま、色んなことを考える。例えば「痛み」についてなんかだ。

「痛み」の感じ方は個々によって違う。医者に痛みを訴えてみたところで、いま自分が味わっている痛みを感じ取ってもらえることは、なかなか出来ない。

手を握り合ったり、お互いに『電脳ヘルメット』みたいなモノを被るだけで、こちらの痛みが相手にそのまま伝わるような、優れた能力や道具はないものだろうかと、頭痛のたびに思わずにはいられないのだが「そんなものがあったら医者のなり手がなくなるだろう」と、友人の失笑をかってしまった。

他人になかなか理解されにくいものは、肉体の痛みだけではない。心の痛みも同様である。

信じられないことだが、生まれながらにして「心や身体の痛み」というものを理解する能力が欠如している人間が存在するという。『精神病質者―サイコパス』と呼ばれる者たちだ。

厄介な持病の頭痛は、長くても5日程で、何もなかったように去っていく。体力が著しく落ちていて怠さだけが残る体で、本箱をあさる。

10年前に目を通したきりの埃だらけの本を手に取り、今泉が描きたかった「人間のかたち」の本質は何だったのだろう…などについて考えてみる。

本の名前は『診断名―サイコパス』 

精神病質チェックリストを開発した心理学博士、ロバート・D・ヘア著の心理ノンフィクション。

診断名サイコパス 診断名サイコパス

販売元:楽天ブックス
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Elephant Accident 99

Ele04 「Elephant Accident」

188×127cm 1999年制作

初対面の人を見るとき、何処を見るだろう。

人によって、見る場所が違うのは確かだ。

「やはり、顔ですかね」と言う人が、圧倒的に多いのではないかと思うけれど、顔を構成しているパーツも色々。

瞳の印象が第一だと思う人もいれば、鼻に目がいって仕方がないという人もいるだろう。

眉毛の形やほくろの位置…そういうものが気になって仕方ない人もいるだろうし、ぼんやりとした雰囲気だけしか捉えずに、好感や不快感を抱く人もいるだろう。

人やモノに対する印象というのは、個人の主観が全てなので、正確に言葉で第三者に伝えるのは難しい。

今泉の描く生物たちは、意図的にデフォルメされた作品が多いと思われがちだが、実のところ、画家本人には、モチーフの全てがカンバスに描かれた通りに見えていたのである。

…ということで、今泉が見ていた「象」は、とーっても変わった形姿の生き物だったようだ。

妹尾河童氏が、彼の主観で覗いたヨーロッパやインド。人が覗いたものを見るというのは、実に楽しいものですね。

愛する友人の本箱より拝借の一冊。これまた、彼女を形作っている何かを覗いたようで、他人の本箱というのは、実に実に楽しいですね。

Book 河童が覗いたヨーロッパ (新潮文庫)

著者:妹尾 河童
販売元:新潮社
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The Tree―庭の木

Tree04 The Tree-庭の木」

F6号 2004年制作

始めは直径20センチ、高さ2メートル程の幼木だった。

風や雨…容赦ない自然の力に鍛えられ、じっくりじっくり、その地に根を伸ばし、今では大きな立ち木となった。

木の名は「アメリカフウ(アメリカもみじ)」

春に新芽を出し、夏には大きな葉を枝いっぱいに広げ、庭に大きな木陰を作る。

秋に見事な紅葉で人目を引いて、冬には丸裸になって、渡り鳥の休憩所となる。

木は美しい。彼らは大地と繋がり、大地は地球において、森羅万象の命の源となる。

画家、今泉憲治が急逝してから、もうじき三年。

大地に返った感想を聞いてみたいのだが、残念ながら肉体という器がなくなった今、人として対話をすることは、未来永劫、叶えられない願いとなった。

今泉が好きだったピアニスト、舘野泉さんは病気を見事に克服し、『左手のピアニスト』として、今もなお多くの人々に、音楽を通じて感動を与え続けている。

アメリカフウを眺めながら、館野泉さんの繊細で、透き通るような美しいピアノの音色を思い出し、失ってしまったものと、生き続けるものなどについて、ちょっとセンチに考えてみたりする。

冬は思考が後ろ向きになって、どうもいけない。早く春が来ますように。

フィンランド・ピアノ名曲集  樅の木op.75-5(シベリウス)  おすすめの一曲

フィンランド・ピアノ名曲集

アーティスト:舘野泉

フィンランド・ピアノ名曲集

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Elephant Accident 85

Ele02 「ELEPHANT ACCIDENT 85]

145.5×122.5cm 1985年制作

福岡市美術館コレクション

文化、色々…。子供時代、漫画は隠れて読むものだった。

漫画は勉強の敵だと、両親が強固な教育方針を持ち、家庭から徹底的に漫画を排除していたからである。

書架に並ぶ『世界文学全集』『日本文学全集』『百科事典』の重量だけが自慢?と言いたくなるような本の数々。

「さあ、好きなだけ読みなさい」と、大変ご親切な限りであった。

小学生の頃、初めて知った漫画の面白さは、手塚治虫氏の『ブラックジャック』だった。

夢中で読んだのは、はるき悦巳氏の『じゃりン子チエ』

漫画の入手先は、その当時の英語の家庭教師だった先生の本箱である。

勉強の終わりに一冊拝借し、翌週に返して、また新たに拝借。いうに及ばず、先生が大好きだった。

実兄は、この頃の『ブラックジャック』の感動が尾を引いて、大人になって医者になった。

隠れて読むものだった漫画が、今や日本を代表する「文化」と呼ばれるものになった。

なんともはや…不思議なもんです。

あずま きよひこ『よつばと!』英語版。

小学生でも読め(笑え)ます。もちろん、脳が退化気味の私目でも…ふふふ。

Yotsuba&!: Volume 3 Yotsuba&!: Volume 3

販売元:楽天ブックス
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Elephant Accident85-The Rear

Sibiele02 「Elephant Accident-The Rear」

227.3×181.3cm Releif Painting

福岡市美術館コレクション

精神活動から生み出されるもの、文化。

芸術であれ、文学であれ、学問であれ…如何にして守り、後世に残していくか。

その役目を担うものの一つとして、芸術には美術館が存在する。

そして、文学には『文学館』が存在するのである。

毎日新聞東京本社の編集委員である重里徹也氏が、全国各地の文学館の中から、特に魅力的だと感じた15の個人文学館を訪れ、毎日新聞の「日曜くらぶ」で1年半に渡り連載していた記事が、『文学館の旅』として一冊の本になり出版された。

<…改めていうまでもないことですが、このような施設にとって、最も大切なのは「人」です。研究も、情報も、もちろん、愛着も、「人」に蓄積されていくのです>

あとがきで綴られた言葉がとても印象的で、文学館が果たす役割や今後の在り方について、考えるところの大きい本だった。

いつか、その地を訪れてみたいと思う文学館の情報が得られたことや、今まで手に取ることのなかった作家の本を、是非読んでみたいと思うきっかけになったことが、何よりの収穫だった。

文学館への旅 Book 文学館への旅

著者:重里 徹也
販売元:毎日新聞社
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素描―クマ

Sobyobear01 「クマ」

The ZOOシリーズのための素描

本川達雄氏の『ゾウの時間 ネズミの時間』について、再び。

生物が生まれて土に帰るまでの時間について考えるとき、必ず頭に浮かぶ本。

何度もトライしては挫折し(数式が難しくて私の脳みそには難解なのでした…)、それでも未だにトライして、絶対に手放せない、お気に入りの大切な本。

『ゾウの時間 ネズミの時間』…実はなんと、子供の本棚にも、一冊!

こちらは、難解な数式も苦にならずに読める絵本なのです。

年齢を問わず、充分に納得できる内容で、あべ弘士さんの絵も、実に良いです。

これも、絶対に手放せない、お気に入りの大切な絵本。

絵ときゾウの時間とネズミの時間 (たくさんのふしぎ傑作集) Book 絵ときゾウの時間とネズミの時間 (たくさんのふしぎ傑作集)

著者:本川 達雄,あべ 弘士
販売元:福音館書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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迎春―初日の出

Sky 「太陽」

太陽築炉工業株式会社コレクション

(天井画)

あけまして おめでとう ございます

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素描―ゴリラ

Sobyogolila04 「ゴリラ」

The ZOOシリーズのための素描

なんだか、気が急いて、いつも“あたふた”して、時間を無駄に過ごすようになった。

元来せっかちな性格なのが、年齢的に下り坂に入って、益々加速をしているのだろうか。

「ああ、まずい」そう、ふと我に返ったら、必ず“象の歩み”を心掛ける。

一歩一歩、大地と共に…。呪文を唱えながら、体内時計のリセットを試みる。

一晩中、街灯の明かりがカーテンの隙間から入り込むこの環境で、体内時計の時間合わせは、なかなか難しい。

生物が生まれて土に帰るまでの時間について考えるとき、必ず頭に浮かぶ本がある。

本川達雄氏の『ゾウの時間 ネズミの時間』だ。

とてもとても気に入って、何度もトライしては挫折し(数式が難しくて私の脳みそには難解なのでした…)、それでも未だにトライして、絶対に手放せない大切な本だ。

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書) Book ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

著者:本川 達雄
販売元:中央公論社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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人間のかたち

Man01 「人間のかたち」 

227×182㎝. F150  1997年

Mixed Mediums Painting 

「人間の元始って、なんだろな?」

そんなことを、夢いっぱいに考えられる時代は、ほんの僅かの間です。

大人になるに従って、知識がいっぱい増えてきて、不思議が段々減っていきます。

一端の口をきくようになり、頭も心も身体も充実した太り方をしているような…そんな気持ちになっていきます。

暮らしに追われるつまらない大人になって、天を見上げることも忘れてしまい

「知識と引きかえに、失ってしまったものも、また多かり」などと、独り言ちたりしてしまうこの頃です。

洋画家、野見山暁治氏の絵本は「人間の元始ってなんだろな?」に、子供の心のまま夢いっぱいに答えてくれます。

Kemukujyara_3 ケムクジャーラ
販売元:セブンアンドワイ ヤフー店
セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する

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hippopotamus―カバ

Zookaba 「Hippopotamus―カバ」

64.5×79.0㎝ 1986年制作

Bond Work ボンド・ワーク

2007年12月18日 カバのカンナが永眠しました。

福岡市動植物園で生まれ育ったカンナ。45歳、老衰。

日本で2番目に長く生きたカバでした。

「Hippopotamus―カバ」は、カンナをモデルに描かれた作品です。

大好きなものが、また一つ、いなくなってしまいました。

合掌。

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ギョッギョツ(魚魚)

Fishchain「ギョッギョッ!(魚魚)」

Chain Work - Installation  1990年制作

取っ掛かりは、1本の釘から。

壁面に向かい、無心で釘を打つ。

トントトン…トントトン。金槌の音のリフレーン。

不意に顔を上げ、挑むように姿勢を整えると、肩に担いだプラスチックの鎖を次から次へと打った釘に掛けていく。

数時間のうちに、釘と鎖でデッサンされた大魚が現れた。

だだっ広い壁面に打った一本の釘から、作家の頭の中には、既に壁面を泳ぐ魚の姿が見えているわけであるから、その創造に関しての脳の整理術には、まさに「ギョツ!」とさせられる。

物事を考え整理するのは、大変難しいな…と良く思う。

頭が疲れたときや、考えるのが煩わしくなったときには、必ずこの本に戻る。

こんなに何度も繰り返しページをめくった本は、他にはないと思う。

(まあ、なにせ古~い本なので…何度も繰り返し読んだからといって、別に不思議はないのですがね。)

思考の整理学 (ちくま文庫) Book 思考の整理学 (ちくま文庫)

著者:外山 滋比古
販売元:筑摩書房
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The Tree―fall

Tree01 「The Tree ― fall」

F30 2004年制作

銀杏の葉っぱで黄色く染まった歩道の上を、サクサクと音を立てながら、足早にバス停に向かう。

空気がピンと張っていて、吸い込むと肺の奥がキリリと痛い。

街のあちらこちらからは、クリスマスの気配が漂ってくる。

この季節になると、必ず引っ張り出してきては、読む本がある。

本の内容は変わらないのに、読後感だけが年々変わっていくのが、少し寂しい。

村上春樹氏の翻訳と山本容子さんの版画が素晴らしい。

(「おじいさんの思い出」と「あるクリスマス」の三部作として読める本)

クリスマスの思い出 Book クリスマスの思い出

著者:村上 春樹,トルーマン カポーティ,山本 容子
販売元:文藝春秋
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象の災難 2001 2点組み

Sibiele 「ELEPHANT ACCIDENT 01」

250.0×146.0×14.0cm(2点組み) FUTON Painting

福岡市美術館コレクッション

ゾウ! 君たちを取り巻く環境は厳しい。

アフリカゾウもアジアゾウも…

国際自然保護連合が絶滅危惧種に定めているって、知ってた?

ゾウ! 君たちと人間が、いつまでも共存できる仲間であり続けますように。

ゾウ! Book ゾウ!

著者:スティーヴ ブルーム
販売元:ランダムハウス講談社
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マッコウクジラ

Fishkujirabond01 「笑うマッコウクジラ」

73.0×60.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

不敵な笑みで潮を吹く。

羨ましいなぁ~と思うときは、ストレスMAX.状態。

…ということで、トイレで独り静かに、トイレ本に読みふける。

何処から読んでも、脳がピンボケしていても、適当に開いて読んでは

「ふーん」といって、閉じることが出来る本。

「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? (Asahi original (66号)) Book 「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? (Asahi original (66号))

著者:村上 春樹
販売元:朝日新聞社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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イエロー・フィッシュ

Fishyellobond03 「イエロー・フィッシュ」

73.0×60.0㎝  1997年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

イエロー・フィッシュは実在します。

海の中道 マリンワールド』のナポレオンフィッシュがモデルの作品。

実物のナポレオンフィッシュは、こんなんじゃありません。念のため。

猫に魚は定番だけれど…

家政婦猫の猫村さんは、坊ちゃんとの楽しかった思い出を糧に、今日も市原悦子をライバルに(?)、人(猫)情に溢れる仕事ぶりで、家政婦のプロを目指してがんばります!

ファイトだニャン!

きょうの猫村さん 1 Book きょうの猫村さん 1

著者:ほし よりこ
販売元:マガジンハウス
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The Tree―杜

Treekashii02 「The Tree―香椎の杜」

P30Y アクリル 2004年制作

子どもの頃、空や林や小路や小川…いたるところに神様がいた。

興味を惹かれる不思議な出来事が、沢山あった。

だんだんと、天を見上げたり、林に足を踏み入れたり、小川の音に耳を傾けたり…そういうことをしなくなってしまった。

いったいそれが、いつ頃からなのか…。そんなことも解らなくなるほど、歳をとってしまった。大人らしい大人になるのは、とても残念なことだと思う。

漫画を読んで、絵やストーリーが良く描けていると思うことはあっても、その作品から小川の音や風の匂いが伝わってくるものは、そうはない。

漆原友紀の漫画からは、いつも音や匂いが伝わってくる。ひと時、神様のいた頃を思い出すことが出来る、そんな漫画だ。

蟲師 8 (8) (アフタヌーンKC) Book 蟲師 8 (8) (アフタヌーンKC)

著者:漆原 友紀
販売元:講談社
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幸せのブタ

Pigplaster_3 「The Happy Pig」

182×225㎝ 1988年制作

Mixed Mediums Releif Painting

中島らも

平成16年7月26日未明、脳挫傷・外傷性脳内出血腫のため死去。52才。

今泉憲治

平成17年3月22日未明、くも膜下出血のため死去。51才。

大好きなものが 二つもなくなって とてもさみしい。

ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫) Book ガダラの豚〈1〉 (集英社文庫)

著者:中島 らも
販売元:集英社
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どすこい大相撲―後姿

Sumoubackbond02 「どすこい大相撲―後姿」

79.0×64.5㎝  1989年制作

Mixed Mediums Painting (ミクスト・メディウムズ・ペインティング)

千秋楽まであと少し。チカラビトと入れ替わりに、本格的な冬の到来となるこの街。

星の勘定で“やきやき”してきたら…京極夏彦氏の抱腹絶倒パロディー本を片手に、日本茶を啜るのも良いかも。

このところ笑いに縁遠いワ…という方は是非どうぞ。

どすこい(仮) Book どすこい(仮)

著者:京極 夏彦
販売元:集英社
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どすこい大相撲―東

Sumoubond01 「どすこい―東」

79.0×64.5㎝  1989年制作

Mixed Mediums Painting (ミクスト・メディウムズ・ペインティング)

バス停や地下鉄の構内で、ちらほらと力士の姿を見かけるようになると、この街にもいよいよ冬がやって来るのだな、と思う。

乃南アサは著書『チカラビトの国―乃南アサの大相撲探検』の「あとがきによせて」の中で以下の様に語っている。

『…古来チカラビトと呼ばれた力士たち…(中略)…人間には実に様々な生き方があるものである。信じて、選んだ道を貫ける人は幸せだ。そして、そんな人たちは等しく独特の穏やかさや透徹した眼差しを身につけている。チカラビトの国には、そんな人がたくさんいる。 

彼らはある意味で職人である。職人だから多くを語らない。だが、チカラビトを支えるために、愚直なまでに歩み続けることが、いかに貴重な、かけがえのないものであるかを、彼らは身をもって教えてくれた。』

チカラビトが初心に立ち返り、彼らの国を崩壊させずにいてくれることを、願ってやまない。

チカラビトの国―乃南アサの大相撲探検 (新潮文庫) Book チカラビトの国―乃南アサの大相撲探検 (新潮文庫)

著者:乃南 アサ
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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象の災難―鎮魂

Elehamsam  「Elephant Accident―鎮魂」

85×33×20㎝  2002年制作

FUTON Painting (フトン・ペインティング)

「死」にもいろいろな形がある。

自分の死について、常に心にとめ、すぐ側にあるものとして考えることがあるだろうか。

ある日突然、予期せぬ出来事によって、帰らぬ人となる「死」もあれば、肉体という器に期限がつけられ、確実に近付いてくる死の足音に恐怖しながら、いつかは受容せざるをえない「死」もある。

今泉憲治の遺作を観るたびに、奥山貴宏という作家の名前を思い出すたびに

今を生きるということと、その先に必ず待っている死について、真摯に考えずにはいられない。

ヴァニシングポイント

ヴァニシングポイント

著者:奥山 貴宏

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象の災難 2003

Kenbipaintele 「Elephant Accident―象の災難」

235.0×187.0㎝ 2003年制作

福岡県立美術館コレクション

今泉憲治は「もし人間以外のものになれるなら、象になりたい」と言い、その姿を追い続け「生への憧れのイメージ」として、カンバスに閉じ込めてきた。

恩田陸は「象って怖いですよね」と言い、その姿を「恐怖や死のイメージ」として、言葉の中に閉じ込めている。

古くは「きさ」と呼ばれ、人間と共に様々な時代を生き抜いてきた「象」。

その摩訶不思議な動物に対して抱く感情は、十人十色のようだ。

41ncmz0k13l_aa240_象と耳鳴り―推理小説 (祥伝社文庫)

著者:恩田 陸

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象の災難 2002

Ajibiele 「Elephant Accident―象の災難」

in AJIBI HALL(福岡アジア美術館ホール) 2002年制作

FUTON Painting(フトン・ペインティング)

1984年。村上春樹の世界において、象は<象工場>でつくられ、主人公『僕』の手によって水増しされながら、その個体数を維持していた。

2002年。今泉憲治の世界において、象は人間に狩られ追い立てられながら、消滅へのカウントダウンを始めた。

そして…2007年現在。象は様々な災難に見舞われながらも、今のところまだ地球上に存在し、愛すべき動物として人間と共存している。

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991 Book 「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

著者:村上 春樹
販売元:新潮社
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トリケラトプス

Triceratops 「TRICERATOPS」

73×61㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

どこかで会ったことがあるような…。

近所のおじさん?学校のセンセ?それとも我が家のお父さん?

はたまた、デンと構えた古女房…?

ユーモラスなお顔のトリケラトプス。

さて、世界中に繁殖している「愛すべき謎の宇宙生物」こどもの第3弾。

等身大の子供成長日記。現実に近い子供の実態が、笑えてコワイ。

絵が下手くそで、コマ割がぐちゃぐちゃ…取っ掛かりで読む気を削がれてしまうんだけれど、見事に心のツボを突かれて、脱帽。

毎日かあさん カニ母編 Book 毎日かあさん カニ母編

著者:西原 理恵子
販売元:毎日新聞社
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ブラキオザウルス

Bond02 「BRACHIOSAURUS」

73×61㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

見つめられると視線を逸らせない、純粋な瞳のブラキオザウルス。

胸がクゥーンとなる瞳って、身近にもありますね。

わんこ、にゃんこ、仔馬に仔牛。あ、そうでした、あと人間のこども…なんかも。

世界中に繁殖している「愛すべき謎の宇宙生物」こどもの第2弾。

『バカ姉弟』の地主おねいと弟くん。

永遠に愛され続ける「最強のこども」でいてほしかったのだけれど。

二人ともオトナに変身してしまいました。残念…くすん。

バカ姉弟 5 (5) (KCデラックス) Book バカ姉弟 5 (5) (KCデラックス)

著者:安達 哲
販売元:講談社
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ばんざいゴジラ

Mon01_4 「TYRANNOSAURUS―ばんざいゴジラ」

73×61㎝ 1987年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

「ガォー!」と一発、吼えて暴れたいときもあります。

残念ながら、人間に生まれてしまったので、我慢することにします。

あ、でも… 『よつば』には 恐竜も宇宙人も敵わないかも。

子供は 恐竜で宇宙人だ。 でもって…世界中に繁殖している「愛すべき謎の宇宙生物」かな。

よつばと! 7 (7) (電撃コミックス) Book よつばと! 7 (7) (電撃コミックス)

著者:あずま きよひこ
販売元:メディアワークス
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