カテゴリー「ひと・野見山暁治etc」の7件の投稿

ELEPHANT ACCIDENT ―象の災難

Ele10_2 「ELEPHANT ACCIDENT ―象の災難」

FUTON Painting Installation

 福岡県立美術館於 (1993年制作) 

天井からぶら下がった、切断された象の足。

切断部分からドロリと流れる赤い血が印象的な作品だった。

今泉の死後、東京藝術大学時代の恩師である、野見山暁治先生から一通の手紙を頂いた。

なんであんな若さで 足早やに去っていったものでしょう。

仕事はこれからの可能性を感じさせる 荒削りなものであっただけに 今泉さんの死は 本当に間違いであったような気がします。

私は象の足のオブヂェが好きでした。

できるならば 本学でやらしたかった。

ま、こんな希望を 今ごろ愚痴っぽくのべても致し方ない。

なんとしても 元気を持って生きて下さい。

野見山暁治

…なんとしても 元気を持って生きてください

― もう駄目だ。

そんなことを思った日、幾度この言葉に助けられたことだろう。

こんなに力強く、優しい言葉に触れたことはなかった。

いまでも、この言葉に支えられながら、なんとしても元気を持って生きていきたいと、そう思いながら日々を紡いでいる。

まもなく、今泉がいなくなって、5度目の夏がやってくる。

息子、まもなく14歳。

手がひとまわり大きくなった彼の次の目標は、ナザレー。

娘、まもなく11歳。

身体が三倍ほど大きくなった彼女のとりあえずの目標は、母より体重を軽くすること…(;´д`)トホホ…

タンゴ・パッション.館野泉 ナザレを弾く タンゴ・パッション.館野泉 ナザレを弾く

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The Tree-老木

Tree03 The Tree-老木」

F6号 2004年制作

突然の初夏の陽気に、身体がびっくり。

環境に適応できない身体になりつつあるなぁ…と、老いを実感。

春疾風も薫風も青嵐も…

やってくる風に「ようこそ」と、ワクワクドキドキしたのも、遠い昔のこととなりつつある。

老木の周りは、草さえ生えていない静かな空間。

長く伸びた影だけが、老木が実在することを教えてくれる。

ふと、振り返る。

わたしの影は、ちゃんと長く伸びているだろうか…(苦笑)

さて、80歳を過ぎても、今なお『創造の翼』で飛び続ける洋画家、野見山暁治。

福岡県立美術館でコレクション展が開催されます。

初夏の陽気に誘われて…是非、足をお運び下さいませ(*v.v)。

Img077

福岡県立美術館コレクション展

特集:野見山暁治―エソラのかたち

4月18日~6月28日

詳しくはこちら→展覧会

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The Tree-庭の木

Tree02 The Tree-庭の木」

F6号 2004年制作

春信。

『ふと窓の外に目をやると、節分の日の豆打ちの残りを、雀がベランダで啄ばんでいるのが見えた。嬉しくなって窓を開けると、心なしか空気がやわらかい』…そう書いたのは一年前。

時間の流れのなんと早いことだろうか。

そして…。

今年もまた、我が家に春の訪れを告げる、一枚の葉書がやってきた。差出人はもちろん野見山暁治先生だ。

寒中お見舞

さき行き おぼろげな世相です

ともかくも 歯を食いしばって 暮らしましょう

大丈夫かな ぼく 入歯だけど

2009年 冬

みなさん 元気だろうかと 心配です。 なんか 励ましてやりたい。

    野見山 暁治

先生、また春がやってきますね。

こちらはみな、大変元気です。

失ったモノは、もう二度と戻らないということを、ようやく理解できるようになりつつあります。

…ということで、平凡な我が家の毎日にも、少しは進展がみられるようです。

ベランダの打ち豆の残りを、チュンチュンと嬉しそうに啄ばんでいる雀を見ながら、今年は野見山先生のように『つよいひと』になって、これからやってくる新しい季節を見送りたいと、そんなことを思ったりする暖かな午後であります。

(異境で癌に冒され、死の床についた妻。異文化との摩擦に苦しみながら懸命に孤独な看病を続ける画学生の夫(野見山暁治)。その壮絶な日々を日録をもとに克明に再現した、小説を超えたレシ(実録))

パリ・キュリイ病院  

著者:野見山 暁治

パリ・キュリイ病院

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エイ

Fishmantabond04_4 「エイ」

60.0×73.0㎝ 1990年制作

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

今泉の東京藝術大学時代の友人、金藤 櫂さんが本を書いたというので、さてどんな内容だろうかと、柄にもなく『詩画集』などというものを購入してみることにした。

本を持参で会いに行けば、サインをしてくださるというので、さっそく購入した詩画集を持って金藤氏のもとへ…。

大変快活で気さくな方なので、二年ぶりの再会にも関わらず、オーバーアクションで表情豊かに歓迎してくださった。(好き放題に注文を付けて、ちゃっかりサインを頂いた私も私ですが…)

鉛筆によるモノトーンの世界に、金藤氏が綴った詩が添えてあって、気に入った絵から、あるいは心に留まった文章からと、パラパラとめくりながら、のんびりと楽しめる詩画集になっている。

タイトルは『歩く人』、副題は-あなたへのやすまり波-である。

本の最後に「着陸地点」と題して、金藤氏のモノトーンへの想いが書いてあり、これが今泉作品と全く対照的な世界観を持っているので、なかなか興味深く面白かった。

ある年齢を過ぎてから、詩集というものを手に取る機会がめっきり減ってしまっていたが、金藤氏の詩画集を楽しんでいるうちに、谷川俊太郎氏の詩集の中で一番好きな一編を思い出し、急に読み返したくなって本箱を引っ掻き回してしまった。

タイトルは『灰についての私見』(「定義」より)である。

そして、ふと気付く。

ああ、そういえば、小学校は『読書週間』真最中だったな…。雑事にかまけているうちに、世間様は、もうすっかり読書の秋へと突入しておりました。

<灰についての私見> 谷川俊太郎  集英社文庫 谷川俊太郎詩選集2より

どんなに白い白も、本当の白であったためしはない。一点の翳もない白の中に、目に見えぬ微小な黒がかくれていて、それは常に白の構造そのものである。白は黒を敵視せぬどころか、むしろ白は白ゆえに黒を生み、黒をはぐくむと理解される。存在のその瞬間から白はすでに黒へと生き始めているのだ。

だが黒への長い過程に、どれだけの灰の諧調を経過するとしても、白は全(まった)い黒の化するその瞬間まで白であることをやめはしない。たとえ白の属性とは考えられていないもの、たとえば影、たとえば鈍さ、たとえば光の吸収等によって冒されているとしても、白は灰の仮面のかげで輝いている。白の死ぬ時は一瞬だ。その一瞬に白は跡形もなく霧消し、全い黒が立ち現れる。だが―

どんなに黒い黒も、ほんとうの黒であったためしはない。一点の輝きもない黒の中に目に見えぬ微少な白は遺伝子のようにかくれていて、それは常に黒の構造そのものである。存在のその瞬間から黒はすでに白へと生き始めている。

歩く人―あなたへのやすまり波 Book 歩く人―あなたへのやすまり波

著者:金藤 櫂
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TUOJIANGOSAURUS―恐竜

Bond01 「TUOJIANGOSAURUSートゥオジャンゴサウルス」

73×61㎝ 1987年制作 

太陽築炉株式会社コレクション

Bond Work(ボンド・ワーク) Mixed Mediums on Card Board

トゥオジャンゴザウルス

名前の意味は、中国の川『トゥオジャン』のトカゲ。

背中に、とげ状の骨盤が2列に並んでいるのが特徴の、ジュラ紀後期の植物食恐竜。

今泉憲治お得意のデフォルメ作品。

背中のとげが、作家の想像の翼にのって、花火のように鮮やかに天に向かって拡がっている。

ちびっ子恐竜博士や研究者には、お叱りを受けそうなトゥオジャンゴザウルス』。

これは確かに間違った恐竜の姿であるかもしれない。

が、しかし…そのことを充分に知りながらも、想像の翼を拡げることの楽しさを失わない、そんな大人であってほしいと思う。

80歳を過ぎてもなお、想像の翼で心の天空を飛び続ける作家、野見山暁治先生の展覧会。

ダイレクトメールの「子供たち、元気ですか」の万年筆の文字に、思わず「ええ、元気です」と答えてしまっていた。

Nomiyama_2 早良美術館 るうゑ 15周年記念

野見山暁治』展

2008/4/30~5/18  11:00am~5:00pm 入場料200円

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The Tree―木の芽時

Tree05 「The Tree―木の芽時」

F6号 2004年制作

休日の穏やかな午後。

ふと窓の外に目をやると、節分の日の豆打ちの残りを、雀がベランダで啄ばんでいるのが見えた。

嬉しくなって窓を開けると、心なしか空気がやわらかい。

部屋に差し込む陽光に、春の気配を感じながら、ちょっとだけ気持ちが温かくなった…はずだったのに。

翌日は、針のように尖った冷たい空気が、顔に身体に突き刺さり、恨みがましく空を眺める。天の気紛れに、身体が追いつかない

春が恋しい、そう思い始める頃に、今泉の遺児たちに必ず届く葉書が1通、今年もまたやってきた。

差出人は野見山暁治先生だ。

二人ともげんきそうで よかった、よかった。 

颯太クン、絵心がなくて、これも よかった。 

二代にわたって、食えないことばかり続けたら、これは大変。

樹音さん、漫画ばかり描いているうちに すぐに大人になるよ。

僕が子供のときは、漫画ばかり描いてました。

ふふふ。ほんとに、ほんとに。…と、母は家計簿とにらっめっ子しながら思います。

さあ、春はもうすぐだー。

野見山先生の万年筆のインクは、いつも温かい春の匂いがします。

うつろうかたち Book うつろうかたち

著者:野見山 暁治
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Elephant Accident85-The Rear

Sibiele02 「Elephant Accident-The Rear」

227.3×181.3cm Releif Painting

福岡市美術館コレクション

精神活動から生み出されるもの、文化。

芸術であれ、文学であれ、学問であれ…如何にして守り、後世に残していくか。

その役目を担うものの一つとして、芸術には美術館が存在する。

そして、文学には『文学館』が存在するのである。

毎日新聞東京本社の編集委員である重里徹也氏が、全国各地の文学館の中から、特に魅力的だと感じた15の個人文学館を訪れ、毎日新聞の「日曜くらぶ」で1年半に渡り連載していた記事が、『文学館の旅』として一冊の本になり出版された。

<…改めていうまでもないことですが、このような施設にとって、最も大切なのは「人」です。研究も、情報も、もちろん、愛着も、「人」に蓄積されていくのです>

あとがきで綴られた言葉がとても印象的で、文学館が果たす役割や今後の在り方について、考えるところの大きい本だった。

いつか、その地を訪れてみたいと思う文学館の情報が得られたことや、今まで手に取ることのなかった作家の本を、是非読んでみたいと思うきっかけになったことが、何よりの収穫だった。

文学館への旅 Book 文学館への旅

著者:重里 徹也
販売元:毎日新聞社
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